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2018年10月28日付の日経新聞で「日本は『SaaS元年』、スタートアップが引っ張る」と掲載されて以降、今現在に至ってもSaaS提供を軸にビジネスを始めるスタートアップ企業は増え続けています。
しかし、スタートアップがSaaSを企画する上では、抑えておかなければならないポイントもあります。
この記事では、そんな「スタートアップがSaaSを企画する上で重要な3つのポイント」について解説します。
日本のみならず、世界的に見てもSaaSをはじめとしたパブリッククラウドサービスの市場は盛況です。
まずは、その中でSaaS市場が今後どのように変化していくと考えられるかを、データをもとに確認します。
2022年、総務省が発表した「令和4年版情報通信白書」の中で公表されたデータ(上図)からもわかるように、2017年以降世界のパブリッククラウドサービス市場は成長の一歩を辿っています。
この中で、SaaSの数値のみをピックアップしてみると、下表のようになっています。
総務省ではこの流れは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機としたオフィスの移転・縮小に伴うクラウドへの移行やDX(デジタル・トランスフォーメーション)、データ駆動型ビジネスを進めるために、クラウドを活用したICT基盤の強化が進んだためと分析しており、今後もさらに拡大すると予想されています。
スタートアップとは、「新興企業=起業して間もない会社」と訳されることもありますが、本来の意味は「急成長をする組織」のことを指し、そこに組織の規模や設立年数などは含まれていません。
似た組織として考えられている「ベンチャー企業」との違いは、主に「イノベーション」と「成長スピード」の2点です。
スタートアップは新しい商品・サービスなどを提供することにより、社会に変革を起こすこと(イノベーション)を目指し、さらに短期間でイグジットを実施するために急速な成長が求められます。
近年のスタートアップは、デジタル産業としてグローバルネットワークの中で戦うことが宿命付けられていると言ってよく、そのため急成長を続けるSaaSを活用したビジネスモデルを選ぶ企業が増えているのです。
その結果、前述の通り現在のスタートアップ業界をSaaSが牽引する状態となっているのです。
スタートアップが選ぶビジネスモデルとしては、成長著しいSaaSを活用するのは、デジタル社会で戦うことを考えれば、ある意味当然のことです。
しかし、そのためには注意すべき点もあります。
ここでは、特に重要な3つのポイントに絞って解説します。
DX推進に伴い日本中の企業がデジタル化を模索している現代は、まさにSaaSの需要が高まっているといえます。
その一方、スタートアップの主戦場がSaaSとなっているため、ライバルとなる企業も手強くなっています。
どんなビジネスでも自社の顧客を理解することが不可欠なのは当然ですが、オンラインを利用して直接ユーザーとの接点を持つことが少ないSaaSビジネスにおいては、特に顧客の分析を行うことが重要となってきます。
SaaSスタートアップだからといって、ゲームチェンジを起こすほどの画期的なサービスなど、そうそう生まれるわけではありません。
かといって、単にコモディティ化した「どこにでもあるサービスを当たり前に提供している」という状態では、市場でのリーダーシップを確立することは到底できないでしょう。
わずかなポイントであったとしても自社サービスの利点を、スピード感を持って的確にユーザーに訴求することが、SaaSスタートアップとして生き残っていくポイントであるともいえます。
自社のサービスの強みはどこにあるのかといったことを冷静に分析し、それを的確にユーザーに対して訴求することができなければ、どんなクオリティのサービスを保持していても、それこそ宝の持ち腐れです。
そのためにも、顧客のアクセスポイント、登録ユーザー数、紹介量など、製品・サービスごとの利用動向を測る様々な指標がありますが、アジャイルなリリースでテストを繰り返し、それらの指標に沿ってユーザーニーズを分析することで、スタートアップが成功するか否かが決まるのです。
また、従来の買い切り型ビジネスとは異なるSaaSの場合は、顧客に継続的に利用してもらわなければビジネスモデル自体が成り立ちません。そのため、立ち上げ時はもとより、変わり続ける顧客と社会の需要に合わせて変化をし続けていくことも重要となります。
SaaSスタートアップに限らず、自社が提供しようとしているサービスの市場規模がどの程度のものなのかを読み切ることは、ビジネスの基本です。
しかし多くの場合、その読み方が希望的観測に過ぎることもあるようです。
スタートアップ企業としては志高く、SaaSによって社会を変えようという意識自体は素晴らしいものですが、大きな市場はそれだけ多くの企業や業種が狙いにやってきます。
そんな中で真っ向から勝負しようとしても、それは人的・金銭的共にリソースがいくらあっても足りません。
既に市場が成熟期にあるSaaSのビジネスモデルでは、GAFAMのようなイノベーション企業が生まれる確率は極めて少なく、そこを狙っていくのは現実的ではありません。
SaaSスタートアップで狙うべきは、競合他社、特に業界のリーディングカンパニーが参入してきても、そこそこ良い戦いができる程度の規模の市場を探すべきです。
スタートアップ企業を興すには、資金調達が重要な課題です。
設立時には、一般的な銀行などだけでなく、投資家やVC(ベンチャーキャピタル)などから資金を調達することも多いはずです。
しかし、現在も急成長を続けるSaaS市場ですが、投資家たちの間では既にSaaSというだけで魅力を感じる状態ではなくなっているようです。
SaaS型ソフトウェアは主にサブスクリプションで提供されることが多く、通常のスタートアップと比べると、売上の立ち方が異なっています。
何らかのサービスや商品を販売する「売り切り型」のスタートアップと比べ、サブスクリプションを中心としたSaaSスタートアップの売上は完全に先行投資型で、継続的に収益を上げていくことを目指しています。
そのため、投資家に対して直近の実績や過去の実績を説明する場合、どうしても成長途中でもコストがかかっている状態は、事業効率が悪く見えてしまうのです。
こうした状態を避けて資金調達を受けるためには、投資家との適切なコミュニケーションを取り、自社のビジネスモデルとビジョンを伝える交渉力も必要となります。
スタートアップがSaaSを企画する上で、重要な3つのポイントをご紹介しました。
SaaSスタートアップは今後もますます成長が期待できる分野で、これからも多くの参入が見込まれ、多くの投資家の注目を集めるのは間違いありません。
しかし、その分そこでの戦い方を間違えると、その他大勢の名も知れず消えていく一社となってしまいます。
小回りが効くというスタートアップならではの利点を最大に活かし、地に足の付いた企画で適切な市場で勝負することが、勝つためには重要な施策となるはずです。
弊社にご関心をお持ちいただき、
ありがとうございます。
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