【宇宙での歯科治療ってどうやるの?】気になったので調べてみた。

先日、未来の歯科治療の可能性として、ロボットによる歯科治療をご紹介したが、今回は宇宙での歯科治療について取り上げていきたいと思う。

未来の歯科治療

はじめに!宇宙での歯科治療の歴史

宇宙での歯科治療

宇宙飛行士の口腔疾患のリスクを調べた研究は複数報告されている。その歴史は古く、すでに1970年にはSKYLABミッションで宇宙飛行士の歯の健康状態を調べている。
その中で、宇宙に滞在することで、歯垢や歯石が増加したこと、歯周病原性の嫌気性菌が増加したことが報告されている。

宇宙での口内環境

宇宙での口内環境

さらにう蝕(虫歯)については、地球の海の底を潜航する潜水艦でのデータからシュミレートして、宇宙でのう蝕のリスクが高いことが報告されている。また宇宙の微小重力環境での宇宙飛行士の身体に生じる心循環器系の機能低下、骨量減少、筋萎縮などについての研究を行う、ベッドレスト研究設備下に於いて、睡眠時に唾液の分泌量の減少と舌や下あごの運動機能減少などの口腔機能が低下したデータも存在する。

火星アナログ研究ステーションプログラムでは、唾液内のストレス成分が増加したことから、模擬宇宙環境でう蝕や歯周病のリスク因子が増悪することが報告されている。

宇宙飛行士の口腔健康管理

宇宙飛行士の口腔健康管理

宇宙飛行士の口腔健康管理について、検討したNASAのDesign Reference Mission(人間を火星に送るミッションの概念設計研究)において、う蝕や詰め物が外れる可能性があるため治療の方法を検討する必要があるとされている。
診断についてはMedical Requirements Integration Document(医療要件の統合文書)においてオルソパントモグラム撮影が義務付けられている。しかし、宇宙滞在時、ミッション完了後の測定は行われていないため,宇宙滞在による口腔疾患のリスクや影響は十分に評価されていない。

宇宙空間での歯科治療について

宇宙滞在時の歯科治療については、宇宙滞在時における口腔症状対応マニュアルなるものが搭載されているが、現状では歯科医師以外では使用が難しい可能性があり、今後はより簡易的で効果的な治療器具や対処マニュアルの搭載が必要である。

※筆者は安易に宇宙に歯科治療ロボットを持っていけばいいのではと考えてしまうが、おそらく電源・重量・内容・メンテナンス等考えることが多くあるのかも知れない。

宇宙空間での歯科予防について

宇宙飛行士各自の歯ブラシやフロスを用いたセルフケアに任されている。
特段、決まった口腔内ケア方法があるわけではない。
宇宙空間に人間が滞在した記録はまだ少ないため、効果的な使用法やう蝕予防としてのフッ化物の利用など口腔健康の知識を向上させるようなマニュアルは作成されていない。

今後の宇宙での歯科予防について

宇宙飛行士の口腔健康管理については「診断」、「治療」、「予防」とそれぞれの視点に課題があることがわかった。

う蝕や歯周病のリスクとなる唾液量の減少や舌機能の低下が起こる可能性も報告されているため,
口腔機能向上プログラムの提供なども予防効果として大きいと考えられる。

近未来の歯科治療

宇宙空間での歯科治療について

今後は、ISSでの1年間の宇宙滞在、さらに月や火星へのミッションなど長期間の宇宙滞在が見込まれるため、宇宙飛行士のう蝕や歯周疾患の重症化や急性化は十分に起こる可能性がある。
う蝕や歯周病が急性化した場合には激しい疼痛を伴うことになるが、宇宙には対応できる歯科医師がいないため、歯科疾患の予防とリスク管理は非常に重要である。そのため宇宙飛行士の口腔の健康向上を目的として,
研究課題や運用上の対応策(診断,治療,予防)を取組む宇宙口腔健康向上プログラムを作成する必要がある。

参考:宇宙航空環境における歯科の課題と今後の展望