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紙媒体のチラシやパンフレットからはじまり、インターネット上のホームページ、さらにはサイトやアプリ作成、SNSに至るまで、企業が自社の商品やサービス、あるいは自社そのものをプロモーションする媒体は、時代とともに変化してきました。
中でも、近年もっとも注目されているのが動画とマーケティングを掛け合わせた方法です。
この記事では、動画×マーケティングで企業のプロモーションを行うメリットをご紹介するとともに、その手順を具体的な5つのステップに分けて解説します。
目次
企業のプロモーションには動画マーケティングに注目
時代とともに変化してきた企業のプロモーション方法の中で、現在もっとも注目されており、効果が期待されているのが、先述した動画とマーケティングを掛け合わせた方法です。
まずは、動画とマーケティングを掛け合わせるとはどういうことなのか。また、動画プロモーションの市場規模やおすすめの理由について解説します。
動画×マーケティングとは
マーケティングとは、アメリカマーケティング協会(American Marketing Association:AMA)によると、「顧客に向けて価値を創造し、伝達し、届けるための、そして組織とそのステークホルダー(利害関係者)に対してベネフィット(利益)を与えるやり方で顧客との関係を管理するための組織的機能および一連の過程」と定義されています(引用:コトバンク)。
かみ砕いていえば、「顧客がその商品やサービスを『欲しい』と思うための仕組みをつくる」ために行う企業活動のことです。
この流れに動画広告などを組み込むことによって、視覚だけでなく聴覚も含めて市場に対して訴えかける仕組みをつくることが、動画×マーケティングの企業プロモーション戦略です。
動画により顧客への商品やサービスの認知を促し、販売促進(プロモーション)の導線を設計します。
ただし、単に動画を公開するだけでは意味がありません。それをプロモーションに利用するためには、動画の公開データを分析し、動画自体だけでなく商品やサービスそのものの改善に動画データを利用していかなければならないのです。
それこそが、動画とマーケティングを掛け合わせてプロモーションに利用していくということなのです。
動画広告の市場規模
2021年10月から12月にかけて株式会社サイバーエージェントのインターネット広告事業本部が行った調査によると、2021年の動画広告市場は、昨年対比142.3%となる4,205億円を記録しました。
この高い成長率はその後も止まる気配はなく、2022年以降も好調に伸び、2025年には1兆円規模になると予測されています。
動画広告といえば従来はそのほとんどがテレビCMでした。
しかし、社会の急速なデジタル化やDXの推進も背景としてインターネット広告が広まり、2021年には前年比121.4%の成長を遂げ、マスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディア)を抜き去りました(参考:2021年日本の広告費/電通)。
このように、成長を続ける動画広告、特にインターネットによる動画広告は、その市場規模をみても今後ますます注目できるプロモーション媒体なのです。
動画×マーケティングによる企業プロモーションがおすすめな理由
インターネット動画による企業プロモーションが有効なのは、その市場規模の成長をみてもおわかりいただけると思います。
しかし、動画×マーケティングが企業プロモーションにとっておすすめである理由は、その他にも多数存在します。
ここでは重要な点に絞って簡単にまとめます。
- 情報量が圧倒的:一般に「1分間の動画コンテンツにはWEBサイト3,600ページ分の情報量がある(参考:米調査会社Forrester ReserchのL.McQuivey博士の研究発表)と言われています。より多くの顧客に印象深い情報を伝え、認知獲得を得やすい。さらに分かりやすいアフターフォロー動画を作成することで、顧客満足度の向上にも一役買うことができます。
- 高速通信とスマートフォンの普及による視聴者動向の変化:いつでも、どこでも、1人ひとりが動画を視聴できる環境が整ったことで、より動画コンテンツの需要は増しています。
- ターゲット層へのリーチ:視聴者を選べないテレビCMなどと異なり、SNSを使い分けるなどの工夫で、自社が狙うターゲット層へ容易にリーチできる。また、インターネットによる動画広告は、発信後の分析が容易なため、よりセグメントされたターゲットを絞り込みやすい点も特徴です。
動画×マーケティングによる企業プロモーション5ステップ
では、企業プロモーションを動画×マーケティングで行うための、5ステップをご紹介します。
ステップ1:プロモーションのゴールを決める
プロモーションに限らず、ビジネスで新しいプロジェクトを立ち上げる場合には、そのプロジェクトのゴールを決めます。
このゴール設定があいまいなままだと、プロジェクトにかかわる全メンバーで方向性を合わせるのが難しくなるばかりでなく、進捗度合いの把握すらできません。
プロモーションのゴールを決定する場合は、主に「目的・ターゲット・訴求ポイント」を明確にしておくことをおすすめします。
目的
そもそもプロモーション(Promotion)とは販売促進のことを指しており、マーケティングの4Pの一部です。
【参考:マーケティングの4P】
- Product:商品・サービス
- Price:価格
- Promotion:販売促進
- Place:流通
つまり、自社が開発した商品やサービスが、顧客にどれだけ「認知拡大され」「購買や契約に結びつく」かどうかの部分を担当しているわけです。
これらを具体的数値で設定しておくことで、そのプロモーションのゴールを「目的の数値化」という面で明確にすることができます。
ターゲットとペルソナ
合わせて重要なのがターゲットの設定、つまり、「誰に」届けるのかという問題です。
自社の顧客が個人なのか企業なのか(BtoCかBtoBか)で、その戦略は大きく変わってくるように、個人であればその世代、企業であれば業種や規模などを、明確に設定しておかなければなりません。
特に、ターゲットよりさらに細分化されたペルソナを設定しておくことは重要です。
ちなみにペルソナとは、自社の商品やサービスを届ける「集団」としてのターゲットではなく、その中からプロトタイプとなる「個人」をイメージして作り上げた人物像を指しています。
仮に企業に向けて行うプロモーションだったとしても、動画を視聴する相手はあくまで人間であり、企業の担当者であることに変わりはありません。
漠然と「〇〇な企業」というターゲットを設定することは重要ですが、それに加えて動画そのものを視聴してもらいたいペルソナ(多くの場合、その商品やサービスの決定権を持つ人物像)を設定しておくことは、動画を届け、さらに後に分析していく場合には最重要の課題となるのです。
訴求ポイント
自社の商品やサービスの訴求ポイントを、明確にしておくことも重要です。
それは、その商品やサービスにしかない(できない)ポイントであり、それはそのまま他社との競合優位性にも繋がります。
これがしっかりと「言葉として説明できる」状態になっていなければ、後に成果を分析した際に、こちらの狙ったポイントとは別のポイントで顧客に受け入れられているような自体が起こっていても、そのズレに気がつくことが難しくなってしまいます。
競合調査の重要性
これまで述べたように、「誰にどんなポイントをどのように訴求するのか」を決定し、その達成した姿を明確な数値を伴ったゴールとして設定することは、動画×マーケティングで企業プロモーションを行う第一歩です。
もしもその判断に悩む場合は、競合調査を行うことをおすすめします。
現代は顧客の生活様式や企業活動が多様化し、それに伴ってニーズも多様化・複雑化しています。
当然、プロモーションを行う側もそれに合わせたアプローチの方法を模索しなければなりません。
しかし、よほどイノベーティブで業界にゲームチェンジを起こすような商品やサービスでない限り、同じような性質の商品やサービスは既に世の中に出回っているはずです。
そうした競合他社の商品やサービスは、どのようなプロモーションで顧客にリーチしているのかを調査・分析してみることは自社のゴールを明確に決定する上でも、貴重な材料となります。
ステップ2:媒体を決定する
ステップ2として、プロモーションを行う媒体を決定します。
多くのインターネット動画は、これまでのテレビCMのように「与えられる」ものではなく、自ら「取りに行く(観に行く)」モノです。
そのため、顧客がより能動的・積極的に自社の動画を「選んで視聴」しに来る仕掛け作りが重要となります。
この仕掛けに大きく関わってくるのが、どの媒体を使うのかということです。
例えばテレビCMであれば、高年齢層の視聴者が多く、その視聴方法は既出の通り「受け身(受動的)」です。
それに対してYouTubeやInstagramなどのSNS媒体では、視聴者(利用者)の年齢層は若くなりますし、そこにリーチしたい場合は、顧客側から積極的に動画を視聴してもらえる仕掛けづくりがより重要視されます。
どんな媒体を選ぶかによって、ターゲットの違いによる訴求ポイントの変化だけでなく、制作する動画の長さや画面サイズも変わってきますので、媒体選びは重要です。
ステップ3:動画の拡散方法を決定する
次のステップでは、動画の拡散方法を決定します。
つまり、制作した動画をどの媒体で「どのようにして顧客に届けるか」といった問題です。
動画を「インターネット上のどこに置いておくか」といった問題と言い換えることもできます。
リーチしたいターゲットに合わせて適切な拡散方法を選ぶことは、そのプロモーションが成功するか否かを決定づける重要なステップです。
これには、主に次の方法が考えられます。
動画広告
プロモーションの一環として、商品やサービスの認知拡大を狙うのであれば、もっとも有効かつストレートな訴求が可能となるのが広告の出稿です。
BtoCマーケティングであれば、Facebook、Instagram、Twitter(現:X)などのSNS上に「広告」として動画を置くことで、狙ったターゲット層へのリーチが期待できます。
また、Googleなどにリスティング広告として出稿することも、より広いアプローチを狙った手法です。
ただし、近年の若い層をターゲットして狙うのであれば、「企業色・広告色」が強い動画を忌避し遠ざける傾向があるなど、ターゲットに合わせた広告を選ぶことが重要となることは言うまでもありません。
自社SNSの運用
YouTubeやTikTokといった動画専門のSNSや、その他のSNSを自社で運用する手法です。
SNSの一番の特徴は、その高い拡散性にあります。
特に、最近の若い世代は気に入った商品やサービスのファンになった場合、「自分ごと」としてその拡散に積極的に協力してくれる場合もあるのです。
いわゆる「いいね」や「ツイート」のような拡散方法を行ってくれるということですが、特に若い世代向けの商品やサービスを展開している企業は、覚えておいて損はありません。
例えば、化粧品メーカー大手の資生堂傘下のブランド「NARS」は、主力商品のプロモーション展開に合わせて、TikTok上でオリジナルの「ブランドエフェクト」と呼ばれる動画投稿を続けたところ、消費の購入意欲が48%もアップしたといいます(参考:資生堂傘下ブランド、TikTokのエフェクトで購入意欲が48%アップ/日経クロストレンド)。
この例のように、狙ったターゲット層に合わせた自社SNSを運用していくことは、動画×マーケティングの企業プロモーションでは、重要なポジショニングにもなるのです。
自社サイトへの掲載
企業の公式ホームページや、商品・サービスを紹介するLP(ランディングページ)といったWEBサイト内に、動画を埋め込んでおく方法です。
こうした自社サイトに動画を利用することで、単に写真画像とテキストだけの場合よりもサイトを訪れた顧客の興味・関心の向上に一役買ってくれます。
当然ながら、最後の一押しとしてのCV(コンバージョン)率アップも期待できます。
そもそも自社サイトを選んで訪れてくれた顧客は、既に自社の商品やサービスに興味を持っていることが前提なので、商品やサービスの特徴や使用方法などを、しっかりと長尺で作り込んだ動画も視聴してくれるはずです。
SNS動画などのように拡散を期待したキャッチーで短尺の動画ではなく、顧客が求める情報をいかに漏れなく提供できているかが重要となります。
メルマガでの発信
ECサイトで一度自社の商品を購入してくれた顧客や、興味を持って登録してくれた顧客へ、動画を使ったメルマガを届ける手法です。
メルマガ動画の目的は、再購入や新製品リリース時の購買行動を促す足がかりとすることにあります。
そのため、商品やサービスの詳細を紹介するよりも、顧客とのコミュニケーション度合いを強め、自社製品やサービス、そして自社そのものに興味を持ってもらう戦略が求められます。
製品開発の裏話や秘話、開発スタッフのインタビューなどは顧客との距離を近づける重要なコンテンツとなるはずです。
インフルエンサー活用
近年、SNSを舞台に台頭してきたインフルエンサーと呼ばれる有名人の持つ影響力を侮ることはできません。
インフルエンサーたちが自身の動画の中で自社の商品やサービスを利用している場面を発信することは、企業プロモーションでも無視できなくなってきました。
主にYouTubeやTikTokといった動画SNSがそのプラットフォームになりますが、いわゆる「案件」と呼ばれる形の動画を作成してもらうことになります。言ってみればテレビCMのスポンサーになるようなものです。
発信力の高いインフルエンサーを起用し、狙った層に的確にリーチすることができれば、高い効果が期待できます。
ただし、その反面最近の視聴者は「露骨なプロモーション」を嫌う傾向があるため、企画に関しても工夫が必要です。
オフラインとの融合
駅構内や電車内など、これまでは普通にポスターなどが貼られていた広告スペースは、最近では「デジタルサイネージ」に置き換わっています。
また、多くの方が目にしたことがあるであろう、タクシー社内にモニターを設置して動画を流す「タクシー広告」など、動画を拡散する場所はなにもインターネット上に限りません。
オフラインとの融合で動画を届ける方法は、より広い層へのアピールには効果的です。
それだけでなく、雑誌広告やチラシといった紙媒体や自社従業員の名刺などに、QRコードを印刷しておき、それをスマートフォンで読み込ませることで相手の画面に動画を流すような工夫も、動画とオフラインを融合させたプロモーション戦略としては有効な手段です。
ステップ4:制作方法を決定する
「誰に、何を、どのように届けるか」が決まったら、次に具体的な動画の制作方法を決定します。
これは、端的にいえば自社で制作するのか、それとも専門の制作会社に依頼するのかを決定することと言い換えることもできます。
制作会社に頼むほうが、よりクオリティの高い動画が制作できることは間違いありませんが、当然それにはそれ相応の費用が発生します。
一方、自社で制作する場合には、台本制作や録画・録音、あるいは編集などに知識が求められます。
また、カメラや照明など、機材にある程度の初期投資が必要な場合も少なくありません。
最近のスマートフォンはカメラ機能も充実し、動画撮影も十分にこなせるだけの機能を備えたモノが多くなってきましたが、やはり最終的なクオリティは高価な機材を使って作られた動画に一歩劣ります。
個人のYouTuberなどが動画作りをするのであればスマートフォン撮影でも問題はないと思いますが、やはり企業がプロモーションとして動画をつくるのであれば、専門の制作会社に依頼することをおすすめします。
ただし、制作会社とは言ってもそのスキルや経験は千差万別です。
制作会社を選ぶ際には、過去の実績と費用をしっかりと比較検討し、さらに「どこまでやってくれるのか」を確認することも重要です。
制作会社によっては、「このような層にリーチするならこういう媒体が良いので、それに合わせた動画を制作しましょう」などとアドバイスしてくれる、いわゆる「動画コンサルティング」の役割を兼ね備えた会社もあります。
自社のスタッフのみで作り上げられるパーツを加味した上で、場合によってはそのような制作会社を選ぶこともおすすめです。
ステップ5:アナリティクス分析をする
最後のステップでは、できあがった動画を実際に公開し、その結果を分析していきます。
YouTubeであればYouTubeアナリティクス、WEBサイトであればGoogleアナリティクス、あるいはその他の有料ツールなどを用いて、その動画が顧客(視聴者)にどのように視聴されているのかといったことを、アナリティクスのデータから読み取っていくのです。
この際、注目すべき指標の例は次の通りです。
- 視聴回数:動画が視聴された回数
- クリック数:画面上に表示された回数を実際に視聴した回数で割った数値
- CV(コンバージョン)率:動画の視聴者が「購買や問い合わせ」など、次のアクションを起こした割合
- 視聴者年齢層:動画を視聴した年齢層のデータ
- 視聴ポイント:動画のどこが一番観られているかを表す数値
これ以外にも注目するべきポイントは数多くありますが、ひとまずはこのぐらいを抑えておけば問題ありません。
重要なのは、この結果が最初に設定したゴールと比べて「どのくらいズレている(合致している)」のかを比較することです。
その上で、その数値がズレていたとしたら、どこが間違っているのかを客観的に分析し、次への改善へと繋げていくことが、動画×マーケティングの真骨頂です。
まとめ
近年注目されている、動画とマーケティングを掛け合わせた企業プロモーションについて解説するとともに、その手順を5つのステップに分けて解説しました。
動画によるプロモーションは市場規模から見てもまだまだ成長段階であり、企業がプロモーションを行う上では、今後さらに重要度を増す施策です。
ここにマーケティングを掛け合わすことで、自社がリーチしたい顧客に対し「よりピンポイントにより訴求力のある情報」を届けることができるのが【動画×マーケティング】のメリットです。
動画によるプロモーションは、媒体の決定や動画制作、そして広告出稿の手配など、なかなか一企業で取り組むには難しい側面を持っています。
しかし、適切な制作会社やコンサルタントと組むことで、突破できるポイントはあるはずです。
この記事が、貴社が動画プロモーションを行う際の一助となれば幸いです。