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「業務を効率化するためにITツールを導入したはずなのに、なんだか以前より忙しくなった気がする」
ふとした瞬間に、そう感じることはありませんか?
たとえば、毎日の業務でこんなシーンに直面していないでしょうか。
- WEBサイトからのお問い合わせ内容を、Excelの顧客管理表にコピー&ペーストしている
- チャットツールで受けた連絡を、タスク管理ツールに手入力で登録し直している
- 月末になると、販売管理システムのデータを経理ソフトに打ち込むためだけに残業している
もし一つでも心当たりがあるなら、それは「ツールの導入」自体がゴールになってしまい、肝心の「データの流れ」が設計されていないことが原因かもしれません。
本来、仕事を楽にするはずのツールが分断され、その隙間を人間が手作業で埋めている状態。これは、まるで「SaaSカオス」とでも呼べる状況です。
今回は、そんな非効率な状況から抜け出し、本来目指していたスマートな業務環境を構築するための現実的な手法、「API連携」についてお話しします。数千万円をかける大規模なシステム改修だけが業務効率改善の解決策ではありません。今手元にあるツール同士を賢く「つなぐ」だけで、業務を見違えるほどスムーズにできる方法を学んでみてください。
【本記事の要点】
- データ転記という「隠れた無駄」をAPI利活用で自動化し、ミスと時間損失を根絶する
- 既存ツールをiPaaSで統合する「モジュール型DX」により、低コストで拡張性の高いWEB業務基盤を構築する
- 現場のオペレーションを変えずに裏側だけを繋ぎ、営業・経理・マーケの業務速度を最大化させる
目次
- 「便利」の裏側で起きている「SaaSカオス」という現実
- ツールが「独立国家」化してしまう問題
- 手作業による「転記」が引き起こすリスク
- 解決への近道は「API連携」にあり
- 「作る」のではなく「つなぐ」という発想
- 今あるツールをそのまま使える強み
- 具体的な活用事例:API連携で業務はこう変わる
- 【事例1】営業部門:問い合わせ対応の初動を劇的にスピードアップ
- API連携前の課題
- API連携後
- 得られた成果
- 【事例2】バックオフィス:請求・経理業務から「月末の憂鬱」を解消
- API連携前の課題
- API連携後
- 得られた成果
- 【事例3】マーケティング:分散するデータを集約し、正確な分析を実現
- API連携前の課題
- API連携後
- 得られた成果
- 低コスト・短期間で実現する「賢い」DX
- まとめ:ツールに使われるのではなく、ツールを使いこなす組織へ
「便利」の裏側で起きている「SaaSカオス」という現実

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗り、多くの企業が便利なクラウドサービス(SaaS)を導入してきました。しかし、その「便利さ」の裏側で、ある問題が深刻化しています。
ツールが「独立国家」化してしまう問題
社内の連絡にはチャットツール、顧客管理にはCRM、会計にはクラウド会計ソフト。それぞれのツールは非常に優秀で、特定の業務の効率化に関しては素晴らしい性能を発揮します。
しかし、ここに落とし穴があります。
それぞれのツールが「独立国家」のように振る舞ってしまっているのです。その結果、ツールとツールの間には深い溝が生まれ、その溝を埋めるために、人間が「データの運び屋」にならざるを得ない状況が生まれています。
IT業界では、このように企業内でツールが無秩序に増え、管理しきれなくなる状態を一般的には「SaaSスプロール」とも呼びますが、まさに現場はカオス(混沌)の状態にあると言えるため、本記事ではわかりやすく「SaaSカオス」と表現しています。
手作業による「転記」が引き起こすリスク
「コピー&ペーストするくらい、大した手間ではない」
そう思われるかもしれません。しかし、その小さな作業の積み重ねが、企業にとって無視できない損失を生んでいるのです。
まず挙げられるのが、時間の浪費です。1件あたりは数分の作業でも、月に100件、年間で1,200件となれば、膨大な時間が単なる「転記作業」に消えていきます。その時間は本来、売上を作るための商談や、新しい企画を考えるクリエイティブな業務に使えたはずの時間です。
次に、ヒューマンエラーのリスクです。人間が介在する以上、入力ミスや転記ミスはゼロにはなりません。請求金額の桁を間違えたり、顧客のメールアドレスを誤って入力したりすれば、最悪の場合、会社の信用問題に発展することもあります。
そして見落としがちなのが、従業員のモチベーション低下です。誰にでもできる単純な転記作業を延々と繰り返すことは、精神的な疲労を招きます。「もっと生産的な仕事がしたい」という意欲を削いでしまう要因にもなりかねません。
解決への近道は「API連携」にあり

では、それぞれが独立したツールやバラバラになっているデータを一元化するために、すべてを網羅した巨大なシステムをゼロから開発する必要があるのでしょうか?
答えは「No」です。
莫大なコストと時間をかけて独自のシステムを作り上げる必要はありません。今ある優秀なツールにあるデータを連携できればよいのです。そこで活躍するのが「API連携」です。ただし、APIで連携できる範囲はツールごとの仕様によって異なるため、まずは部分的な自動化から取り組むのが現実的です。
「作る」のではなく「つなぐ」という発想
API(Application Programming Interface)連携とは、簡単に言えば、異なるソフトウェア同士が会話をできるようにするための「通訳」のような仕組みです。
通常、AというツールとBというツールは、それぞれ異なる形式や構造のデータを扱っているため、そのままでは情報を共有できません。しかし、APIという窓口を通じて接続することで、スムーズな情報のやり取りが可能になります。
「システムを新しく作る」のではなく、既にある優れた機能同士を「つなぐ」。これこそが、コストを抑えて効率化を実現する現代的なアプローチです。
今あるツールをそのまま使える強み
API連携の大きな特長は、現場の負担が少ない点にあります。
「Aのツールに入力されたら、自動的にBのツールにも同じ内容を書き込んでね」
このような指示(プログラム)を組むことで、これまで人間が手作業で行っていた橋渡し役を、システムが自動で担ってくれるようになります。
既存の使い慣れたSlackやkintone、freeeといったツールはそのまま使い続けられるため、現場のスタッフに新たなツールの操作を覚えてもらうための教育コストもかかりません。業務フローを大きく変えることなく、裏側の処理だけを自動化できるのです。
具体的な活用事例:API連携で業務はこう変わる

理屈はわかっても、実際に業務がどう変わるのかイメージしづらいかもしれません。ここでは、私たちが実際に支援した内容をもとに再構成した、一般的な事例をご紹介します。
【事例1】営業部門:問い合わせ対応の初動を劇的にスピードアップ
顧客から反応があった際、どれだけ早く対応できるかは勝負の分かれ目となります。ここでは、手動連携によるタイムラグを解消し、機会損失を防いだ事例を見てみましょう。
API連携前の課題
その企業ではWEBサイトにお問い合わせフォームを設置しているものの、通知は担当者のメールにしか届きませんでした。担当者が外出していればメールの確認が遅れ、夕方に帰社してからExcelの顧客リストに情報を転記し、そこから電話をかけるというフローでした。このタイムラグにより、熱量の高い見込み顧客を競合他社に奪われてしまうことがありました。
API連携後
「WEBサイトのフォーム」「社内チャットツール」「顧客管理システム(CRM)」の3つをAPIで連携させました。
- お客様がWEBサイトで問い合わせボタンを押す
- その瞬間、営業チームのチャットグループに「新規問い合わせあり」の通知が飛ぶ
- 同時に、CRMに顧客情報(社名、担当者名、連絡先、問い合わせ内容)が自動登録される
得られた成果
営業担当者はスマートフォンで通知を確認し、移動中でも即座にお礼の連絡を入れることが可能となりました。面倒な入力作業も一切不要です。「鉄は熱いうちに打て」の通り、問い合わせ直後の対応が可能になったことで、商談化率が目に見えて向上しました。
【事例2】バックオフィス:請求・経理業務から「月末の憂鬱」を解消
月末に集中する請求業務は、経理担当者にとって大きなプレッシャーです。正確性が求められる業務にこそ、システムによる自動化の効果は最大限に発揮されます。
API連携前の課題
その企業では経理担当者が、営業担当者が個別に管理している受注表のデータを、月末にまとめて請求書発行ソフトへ入力していました。件数が多い月には確実に残業が必要となり、入力ミスがないかダブルチェックを行うため、精神的な負担も大きい状態でした。また、営業担当からの報告漏れがあると、請求漏れに繋がるリスクもありました。
API連携後
「受注管理システム」と「クラウド会計ソフト」をAPIで連携させました。
- 営業担当がシステム上でステータスを「受注」に変更する
- その情報がAPI経由で会計ソフトに飛び、請求書の下書きが自動生成される
- 経理担当者が自動生成された下書き内容(金額・税区分など)を確認し、ボタン一つで発行・送付を行う
得られた成果
転記作業がほぼ不要になったことで、経理担当者の月末の負担が劇的に減りました。また、システム上のデータがそのまま会計ソフトへ反映されるため、金額の打ち間違いや請求漏れといったミスも物理的に起こらなくなりました。空いた時間で、経理担当者は本来注力すべき経営分析やコスト管理の業務に時間を割けるようになりました。
【事例3】マーケティング:分散するデータを集約し、正確な分析を実現
施策が増えれば増えるほど、データの管理は複雑になります。「分析よりも集計に時間がかかっている」という、マーケティング現場によくある課題を解決した事例です。
API連携前の課題
その企業では広告運用、SNS、メールマガジンなど、複数の施策を行っていましたが、それぞれのデータは各ツールの管理画面に散らばっていました。そのため毎月のレポート作成時には、各画面からCSVデータをダウンロードし、Excelで一つにまとめる作業に半日以上が費やされていました。
API連携後
「各広告媒体」「アクセス解析ツール」「BIツール(データ可視化ツール)」を連携させました。
- 各媒体の数値データが、毎朝自動的にBIツールへ集約される。
- ダッシュボードを開けば、いつでも最新の成果状況がグラフで確認できる。
得られた成果
レポート作成の手間がゼロになっただけでなく、リアルタイムでの状況把握が可能になりました。変化の速いWEBマーケティングの世界で、スピーディーな意思決定ができるようになったことは、大きな競争力となりました。
低コスト・短期間で実現する「賢い」DX

「API連携」と聞くと、何か高度なプログラミングが必要で、費用も高額になると思われるかもしれません。
確かに、複雑な処理を行う場合はプロによる開発が必要ですが、API連携の場合は、ゼロから独自のシステムを構築する「スクラッチ開発」に比べれば、コストも導入までの時間も圧倒的に抑えられます。
なぜなら、API連携では既存のツールが持っている機能を最大限に利用するからです。家をゼロから新築するのではなく、部屋と部屋をつなぐドアを取り付ける(リフォームする)イメージと言えばわかりやすいでしょうか。
また、最近ではiPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれる、複数のクラウドサービスをGUI上でつなげる中間基盤も登場しています。
- Zapier
- Workato
- Microsoft Power Automate
これらのサービスが代表例です。これらを活用すれば、さらに手軽に自動化の仕組みを構築することも可能です。
一方で、API連携を安全に運用し続けるためには、適切なセキュリティ権限の設定や、連携先ツールの仕様変更(アップデート)への対応が欠かせません。また、クラウド間でデータをやり取りする場合は、各サービスの利用規約や個人情報保護方針との整合性確認も重要です。「つないで終わり」ではないからこそ、導入時の設計が肝心になります。
まずは、社内で「この作業、毎回同じことの繰り返しだな」「このデータをあっちに移すだけで1時間かかっているな」と感じる業務を洗い出してみることから始めてみませんか?その「小さな面倒」の裏側にこそ、API連携による劇的な効率化のチャンスが眠っているかもしれません。
まとめ:ツールに使われるのではなく、ツールを使いこなす組織へ
増えすぎたツールによる「SaaSカオス」は、知らず知らずのうちに組織の生産性を奪っています。ただし、連携や自動化は一気にすべてを行う必要はなく、まずは効果が高いポイントから取り組むことが重要です。その解決策は、今ある資産(ツール)を活かすことの中にあります。
API連携を活用することで、以下のようなメリットが得られます。
- 脱・入力作業:転記の手間をなくし、コア業務への集中時間を創出する
- 脱・ヒューマンエラー:データの自動連携により、入力ミスや漏れを根絶する
- スピードアップ:情報伝達のタイムラグをなくし、ビジネスの速度を上げる
- データ活用:分散していたデータがつながり、経営の見える化が進む
「うちの会社で使っているあのソフトと、このツールはつながるのだろうか?」
「具体的にどの業務から自動化すれば、費用対効果が高いのだろうか?」
そのようにお考えでしたら、ぜひ一度私たちにご相談ください。
株式会社MUは、単なるWEBサイト制作やシステム開発にとどまらず、お客様の業務フロー全体を見渡し、最適なツールの組み合わせや連携方法をご提案する「業務設計」のプロフェッショナルです。
ただシステムを作るのではなく、「どうすればお客様のビジネスがもっと楽に、もっと速くなるか」を一緒に考えます。コストを抑えて、賢く業務を自動化する第一歩を、MUと一緒に踏み出しましょう。皆様からのお問い合わせを心よりお待ちしております。




