【DX投資】DX推進は予算の確保のポイントと費用対効果の算出方法

【DX投資】DX推進は予算の確保のポイントと費用対効果の算出方法

目次

  1. DX予算における費用対効果の算出方法
  2. 求める未来像を明文化する
  3. DXジャーニーマップを描く
  4. 現状の課題を抽出する
  5. ソリューションのためのサービス、ツールを探る
  6. 業務環境のオンライン化
  7. 業務プロセスの効率化・自動化
  8. ユーザーフレンドリーな連携強化と新規開拓
  9. 自社製品およびサービスへの高付加価値化
  10. ビジネスモデルの変革や新規事業展開
  11. 効果的な投資モデルを考える
  12. 運用保守コスト
  13. 開発コスト
  14. 新規投資額
  15. 予算バランスを考える
  16. 得られる成果を試算する
  17. 既存業務の効率化
  18. 新規事業の創出
  19. 費用対効果を算出する
  20. まとめ

近年、企業のDX推進の必要性がますます重要視されています。

そんな中にあって、自社でもDXを始めてみようと思うもののどのくらいの予算をかければよいのか。また、予算確保のための費用対効果はどのように算出すればよいのか。

こうしたことが分からずになかなかDX推進に踏み出せない企業も多いでしょう。

そこで今回は、DX投資におけるカギ「予算確保」の目安となる、費用対効果の算出方法について解説します。

DX予算における費用対効果の算出方法

DX予算における費用対効果の算出方法

DX予算確保のための費用対効果の算出方法は、おおむね次のような流れが想定できます。

  • ゴールを決める
  • DXジャーニーマップの策定
  • ソリューション・サービスを決める
  • 投資モデルを考える
  • 予算バランスを考える
  • 成果を試算する
  • 費用対効果を算出する

求める未来像を明文化する

DX推進によって何を成したいのか。このゴールを決めないことにはどこに進めば良いのかすら分からず、当然のごとくいくら予算をかければ良いのかも決まりません。

そこでまず、DX推進によって得られる(得たい)ゴールを決定します。この時重要なのは「明文化する」ことです。

  • 5年後に利益を50%アップする
  • 市場シェアを3年以内に0.3%増加させる
  • 顧客満足度比率を1年間で2倍にする

など。どんな目標でも構いませんし、複数の目標があっても構いません。

重要なことは「数字」を用いて、できるだけ「具体的」に設定するということです。

その際に、基本理念とともに自社のユニーク性(強み)を明確にし、変化する未来の市場予測の中でどのように戦っていけるのかを考えることも重要です。

さらに、明確にした目標をDX推進に携わるすべての人員がいつでも確認できるように「明文化」し、自社におけるDX推進のゴール=求める未来像として設定しておきます。

DX推進とはデジタル技術とデータの活用によりビジネスモデルを変革させ、新たな企業価値を創出することです。

そのためには時に企業理念や営業方針そのものを変えなければいけない場合も出てきます。

確固たる意志でDXを進めるためには、何よりも求める未来像を見失わないようゴールをしっかりと設定しておくことが重要です。

DXジャーニーマップを描く

ゴールが明確になったら、今度はそこに至るまでの道のりを可視化した「DXジャーニーマップ(またはロードマップ)」を作成します。

「ゴールと道のり」がしっかりと描けていることで、逐次の進捗状況の確認や現状とのズレが確認できるのです。

大まかなDXジャーニーマップが描けたところで、細かい数字などを入れ込み、さらに詳細なマップへと仕上げていきます。

なお、DXジャーニーマップの描き方については弊社が運営するDX推進情報サイト【DXportal®】に詳しく解説していますので、よろしければ合わせてご確認ください。

>>DX推進の要は戦略!ロードマップの作成方法を5ステップで解説

現状の課題を抽出する

  • DXを推進する目的は何か?
  • DX推進への障害となる課題はどこにあるのか?
  • 効率化できる業務はないか?
  • 顧客の求めるサービスに足りないものは何か?
  • デジタルに置換えられる作業、置換えられない作業は何か?
  • 人手が足りず取りかかれない懸案はないか?

などなど。自社における業務上の課題をまずはすべて抽出し、そこから優先事項を決定します。

喫緊に解決する必要のある課題、長期的ビジョンによって解決する課題、これらを一緒くたにして同じ土俵に乗せてはいけません。

ソリューションのためのサービス、ツールを探る

業務上の課題がすべて抽出でき、優先順位が決定されたら、次はその解決のための方策を探ります。ソリューションは主に次の分野に分けて考えます。

業務環境のオンライン化

  • 社内コミュニケーションのオンライン化(チャットツールやオンラインミーティングツール、クラウドストレージなどの導入)
  • 営業活動のオンライン化(電子契約システムや電子署名システムなどの導入)
  • 販売活動のオンライン化(eコマースの展開やロボット接客、チャットボットなどの導入)
  • 経理業務のオンライン化(クラウド会計システムやAI-OCRなどの導入)
  • 広報活動のオンライン化(SNS広告や動画広告などの導入)
  • 人事活動のオンライン化(勤怠管理システムやWEB面接ツール、WEB研修システムなどの導入)

など

業務プロセスの効率化・自動化

  • 定型業務の自動化・効率化(RPAツールの導入やAI-OCRの活用など)
  • 営業活動の効率化(SFAツールや顧客管理ソフトなどの導入)
  • 人事活動の効率化(AIによる選考・評価サポートなど)
  • 従業員ケア対応の効率化(パルス調査サービス、ウェアラブルデバイス、AIメンタルケアサポートなどの導入)
  • 経理財務業務の効率化オンラインバンキングや経費精算システムなどの導入)

ユーザーフレンドリーな連携強化と新規開拓

  • 顧客情報管理および分析(CRMやCDP、DMPなどの導入)
  • パーソナライゼーション(MAツールやLPOなどの導入)

自社製品およびサービスへの高付加価値化

自社の持つ製品やサービスが市場の中でどのような位置にあるかを正確に分析。それがユーザーにとってどのような付加価値を与えているかを判断します。

必要があればユーザーテストなどで生の声を取得するなどして、より高付加価値を与えられる施策を模索します。

ビジネスモデルの変革や新規事業展開

製品やサービスであれば顧客、業務改善であれば従業員と、ソリューションによって恩恵を被る対象は変わります。

その時々において対象ユーザーに最適化されたソリューションを選定し、必要があればビジネスモデル自体を変革させ、派生する価値を新規事業創出へとつなげることができれば、DX推進の真の目的が果たせます。

自社の課題を解決するためのソリューションがどのような価値を生み出すのか?これを正確に予測していくことが、ソリューションのためのサービスやツールを選定していく上でもっとも大切な視点です。

効果的な投資モデルを考える

DX投資額を算出するためには、次の3つの投資モデルに分けて考えることでより正確な予算が算出できます。

運用保守コスト

運用と保守に関わるコストや手間は、特に必要なサービスやツールだけでなく人的コストも重要なポイントです。

自社ですべてをまかなうのであればその人件費、外部に依頼するのであれば外注費用を正確に見積もらなければなりません。

この時に注意すべきポイントとして、トラブル発生時の保守コストを想定しておくことです。

本来、SaaS型のサービスを利用するなどして保守には、できるだけリソースをかけないことが理想ですが、他社との競争有利性を獲得するためにやむを得ない場合などは、貴重な自社のリソースをどこまで割く必要があるかを正確に算定しておかなければなりません。

開発コスト

DX推進のためには数々の新しいデジタルツールやシステムを開発・導入する必要があります。

これらすべてを内部の人材でまかなえる(内製化)のは理想ですが、特に中小企業の多くではそれはあくまで理想論に過ぎません。

そのためシステム開発は、多くの場合外部ベンダーに外注することになるはずです。

その際、どのベンダーを選ぶかということも、開発コストの予算を見積もる上では重要です。

既存のパッケージソフトウェアを利用する場合でも、カスタマイズ費用が別途必要であったり、人数ごとに金額が変わるということはあり得ます。

さらに自社の人員だけではうまく導入が進められないということもあるはずです。

バックオフィス業務と顧客マーケティング業務のどちらにしても、システム開発に際しては自社が持つ人材にはどの程度の費用がかかり、そこからどの程度のリソースを生み出すことができるかを正確に把握しなければなりません。

そうした上で「必要であれば、必要な部分だけ」を、費用対効果にすぐれた外部パートナーを求めるといった考え方が求められます。

新規投資額

DXを進めるためには、まず既存業務のデジタル化や効率化のためのシステム開発から取り掛かることが多いでしょう。

しかし、DXの真の目的である「デジタルテクノロジーとデータを活用しビジネスモデルの変革と新たな価値創造」を目指すには、新規のDX投資も欠かせません。

特に新規事業開発やビジネスモデルの変革といった「他社との差別化を目指す」という分野に関しては、アジャイルな開発手法が取られることが多いと思います。

一般に「手戻りが少なくスピーディーかつ低予算で開発が進められる」と考えられているアジャイルですが、明確な目標が定まっていなければかえってコストが高く右往左往してプロジェクトが進まないということも少なくありません。

これを避けるためには新規投資にかける予算を短期・中長期の2つに分けて考える必要があるのです。

  • いつから取り掛かりいつまでに完遂させるのか
  • 年間どれだけの予算をプロジェクトにかけるのか
  • 中長期的な会社の成長率をどの程度に見積もるか
  • 新規ビジネスの創出を何年スパンで実行するか
  • 既存業務と新規ビジネスの業務配分をどのように捉えるか

こうした様々な要因を分析・想定した上で、経営企画予算やR&D(研究開発)予算との配分を加味しながら決定していきます。

また、短期的には利益から生まれる余剰資金を新規のDX投資にあてます。

対して中長期では利益予測に基づきどれだけの利益を新規投資に回していくかという経営判断も重要です。

DX推進は「守りのDX」から始め、徐々に「攻めのDX」へと移行していくパターンが多く取られますので、短期的には少額で始め、中長期的に段々と予算を増やしていくという計画が、一般的なDX新規投資の決定基準となります。

予算バランスを考える

DX投資のざっくりとした目安としては、一般に「1年間の投資額は年商の1%」といわれています。

前項で算出した予算がこの数値とどれだけ一致、あるいは乖離(かいり)しているかを判断することは、DX投資額を決定する上でも重要な指針です。

また、既存業務の置換えといったデジタル化から徐々に新規投資へ移行していくという考え方は、徐々にDX投資額が増えていくということでもあります。

そのため、中長期にわたる売上・利益計画に基づき、少しずつDX投資の比率をあげていくということも、新たなビジネスモデルによる企業価値を創出していくには欠かせない考え方です。

得られる成果を試算する

DX投資に必要な費用と予算計画の骨子が出来上がったら、改めてそこから得られる成果を試算します。

この際は、既存業務の効率化を図る「守りのDX」と、新規事業の創出に関わる「攻めのDX」の両軸で試算することが重要です。

既存業務の効率化

デジタル化による既存業務の効率化から生まれる利益を試算します。

この際、デジタルツールの利用でどれだけの人件費が削減できるかなど、コストダウンの側面だけでなく、それによって資金的・人材的な余剰リソースが生まれ、それをどう他へ割り振っていけるかを考えることも重要です。

そこから生まれる新しい利益も加味した上で、既存業務の効率化からどれだけの短期的な利益が確保できるかを試算します。

新規事業の創出

新規事業創出から生まれる成果の試算は、特に中長期のスパンで考えなければなりません。

経営判断上、DXへの投資額を確保するためになにかの既存投資をやめるという判断を下す場合もありますが、その差額で生まれた余剰費用も加味した上で、新規事業の成長度合いと兼ね合わせた利益予測を算出します。

費用対効果を算出する

ここまでに算出したDX投資予算と、そこから生まれるであろう利益予測に基づいて、最終的な費用対効果を算出します。

費用対効果はROI(Return On Investment/投資収益率、投資利益率)とも呼ばれ、その投資でどれだけ利益を上げたのかを知ることのできる指標で、ROIの数値が高ければ高いほど効果的な投資ができているといえるのです。

ROIで正確な費用対効果(投資収益率)の想定をしておくことは、DXの効果測定を考える上で重要な目標設定となります。

【ROIの計算式】

(売上ー売上原価ー投資額)÷ 投資額×100(%)

※「利益」を「投資額」で割ることによってROIを算出

まとめ

DX予算を確保するための判断材料として、「費用対効果の算出方法」について解説しました。

しかし、DXに必要な投資額は費用対効果だけでは決まりません。

短期的には利益へと直結しないDX推進施策があったとしても、それが自社が5年後、10年後に生き残っていくために今やるべき施策であるならば、中長期の予算計画の中では必要な投資であるはずです。

現状十分なDX予算が確保できない企業でも、まずは既存業務の改変からスモールスタートして、徐々に成功体験を増やし、少しずつ新たな価値を創出するDX投資へと配分を増やしていくということはできるでしょう。

十分な費用対効果を検討した上で、激化する市場の中で生き残っていくためにはさらに何が必要となるのか。それを熟慮・検討してDX予算を確保することが、自社が持続可能な企業として成長していくためにはもっとも大切な考え方です。

筆者プロフィール

MU編集部

MU編集部

株式会社MU / 編集部
「お客様と共に前進するデジタルパートナー」をキーメッセージに掲げ日々、DX推進企業としてデジタルトランスフォーメーションを推進。
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