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1960年代にインターネットがこの世の中に誕生してから、約60年。IT技術は日進月歩で進化を続け、IT人材に求められるスキルは常に変化し続けています。
特に2000年代に入ってからの約20年は、インターネット人口の急激な増大とモバイル端末やSNSの普及とともに、ビジネスモデル自体がゲームチェンジを続けているといっても過言ではありません。
そこで今回は、いつもの記事とは少し趣を変えて、インターネットの20年史を振り返りながら、その間に変化してきたIT人材に求められるスキルの変遷を見ていきたいと思います。
インターネット20年史
ITとは「Information Technology:情報技術」のことを指しています。一般に「コンピュータとネットワークを利用した技術」の総称と捉えられることも多いITですが、実はこの用語が世の中に広まったのは、コンピュータテクノロジーの歴史から考えてもごく最近のことです。
2000年代に入ってからの約20年間で、インターネットは急速に発展してきました。
今現在、多くの企業でIT人材が求められるようになったのは、こうしたインターネットの発展と無縁ではありません。
そこで、2000年以降の20年間の歴史を考えてみます。
2000年の流行語大賞「IT革命」
ITという言葉が世に登場したのがいつなのか、正直なところはっきりとは分からないのですが、日本で広く一般に「IT」という言葉が認知されたのは、間違いなく2000年です。
この年、日本では「IT基本法(正式名称:高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)*」が成立し、世界最高水準の高度情報ネットワーク社会の実現を目指し、IT戦略本部を内閣内に設立。官民一体でIT化を推進する枠組みが取りまとめられました。
現に、「現代用語の基礎知識」が選出する「ユーキャン新語・流行語大賞」では、『IT革命』という言葉が年間大賞に輝いています(同時選出は「おっはー」)。
*IT基本法は2021年のデジタル社会形成基本法の成立と同時に廃止されました。
モバイル化の加速
2000年というのは、確かにIT、そしてインターネットが革命的に拡大した年です。
かつての産業革命期において、鉄道や高速道路といったインフラが整備され、産業のみならず人々の生活様式が大きく変化したのと同様のことが、この年を境に起こったのです。
それが、情報が飛び交うネットワーク社会の構築であり、一般層へのインターネットの普及です。
1997年には人口普及率9.2%でしかなかったインターネットは、2005年には70%を突破しました。
その流れを大きく加速したのが、2007年のiPhone発売に端を発する、スマートフォンの普及です。
インターネットが広まった当時はPCが主流だったデバイスも、今ではスマートフォンに取って代わられているのは周知の事実です。
さらに、モバイルネットワークは高速化(ブロードバンド化)を遂げ、スマートフォンを通じたインターネット活用は人々の生活自体に変化を与えるようになりました。
2020年インターネット利用率(個人)は83.4%ですが、その利用端末はPCの50.4%に対して、スマートフォンは68.3%と大きく上回っています(参考:総務省令和3年版情報通信白書)。
こうした現象は、人々はスマートフォンの普及以前よりも情報へのアクセス回数が爆発的に増加する結果も生み出しました。
今や、スマートフォンがないという生活は考えられないほど、人々の生活様式そのものを変化させたのです。
当然WEBエンジニアがWEBサイトやアプリを開発する場合にも、モバイル対応は既にマストです。
Javascriptが必要なのは現在でも変わっていませんが、現在はAndroidやiOS向けのアプリを開発する場合には、KotlinやSwiftなどの知識が求められ、開発にもクロスプラットフォームに対応したより広範囲な知識が求められるようになりました。
オンプレミスからクラウドへ
2004年、Googleが「検索エンジン」を主軸のサービスとして上場を果たしました。
その後2006年に当時のCEOエリック・シュミット氏が、「サーチエンジン戦略会議」の中で、クラウドについて「データサービスやアーキテクチャは雲のような存在であるサーバー上に存在し、ブラウザやアクセス手段、デバイスによらず雲にアクセスすることができる」と発言。
これを機に、世界中に「クラウド」という言葉と概念が知られる事となり、CP業界の未来を占うサービスとして注目を集めました。
そして、2006年に企業向けのクラウドサービスのハシリとして、Amazonが「Amazon EC2/S3」の提供を開始しました。
この「Amazon EC2/S3」がその後拡大を続け、世界No.1を誇るクラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)」へと成長していきます。
その後、Amazonに続けとばかりに、現在GAFAM(ガーファム/Google、Amazon、Facebook:現Meta、Apple、Microsoft)と称される世界最大規模のIT企業が、続々とクラウドサービスの提供を開始するのです。
- 2006年:AWS(Amazon Web Services)
- 2008年:GCP(Google Cloud Platform)
- 2010年:Microsoft Azure
これにより、世界の潮流はオンプレミス主流のビジネスモデルから、クラウドサービス主流のビジネスモデルへとゲームチェンジされることとなりました。
それに伴い現場のエンジニアにも、クラウドエンジニアとしてのスキルや知識が求められるようになったのは当然のことです。
- サーバーやネットワークの仮想化
- クラウド上にITインフラを構築
- データベース管理システムやトランザクションモニタなどのミドルウェア構築
これまでのオンプレミス全盛のCP業界では必要とされなかったこれらの要素に関連するスキルや知識が、クラウド時代の到来によって新たにエンジニアに求められるようになったのです。
ICTインフラの定着
インターネットが一般家庭に普及し、ブロードバンド化とモバイル化が急速に加速し、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)はもはや人々の生活に欠かせないものとなりました。
総務省が2022年7月に発表した「令和4年版情報通信白書」で、2015年以降現在までの期間を「ICTの社会・経済インフラとしての定着」と呼称しているように、ICTは電気やガス、水道などと変わらないインフラの1つとして数えられるまでになっています。
ICT分野の生産額では、2014年時点では米国を抜き中国が1位となっているように(同年の日本は3位)、今やGAFAMに代表される米国基準のテクノロジーだけでなく、中国の動向も無視できなくなりました。
また、NTTが「2025年までにNTT東日本・西日本の公衆交換電話網(PSTN)をIP網へ移行する」といった構想を2015年に発表、2021年に開始したように、通信インフラに関してはさらに高度化が進んでいます。
- 5Gサービスによる高速大容量、高信頼・低遅延、多数同時接続
- 4K・8Kのライブ配信
- 没入感の高いVR/AR体験
- スポーツ観戦の多角化
- 遠隔手術や自動運転技術の確立
こうした様々な分野でのICTインフラはさらなる未来へ向けて進化を遂げ、5Gの次の企画である6G/Beyond 5Gに向けた準備も着々と進められています。
こうしたICTインフラはすでに生活の一部として定着したと考えてよく、それに伴ってエンジニアもより広範でグローバルな活躍が求められるようになりました。
内閣府主導の科学技術政策としても、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」を目指すべき未来社会の姿「Society 5.0」として社会に向けて広く提唱しています。
そもそもITに携わるエンジニアは、時代ごとに「これまでにはなかった概念」に対応する力が求められてきましたが、今後はさらに新しい「なにか」を創り上げる発想力や常に最新の上をいくスキルが求められるようになるはずです。
AIの進化とDXへの対応
エンジニアに求められるスキルが変わっても、実際にそれに対応できているエンジニアは実はそれほど多くありません。
IT人材不足の問題はこの20年間解消されていませんが、今後の見通しとしても経済産業省の試算では、2030年には国内で最大79万人ものIT人材が不足すると言われています。
ITの発達とともに求められるようになってきたのが、ビッグデータの取り扱いやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)、AI(人工知能)など、より高度で現代のニーズに対応できるスキルです。
特にAIの活用が一般化してきた昨今は、AIの活用を前提としたシステムをデザインすることが重要となります。
また、全てのビジネスがDXされていく現代では、DXに対応した
- セキュリティ整備をはじめとする深いITリテラシー
- UI/UXデザインスキル
- データサイエンスの知識
など、20年前には考えられなかったスキルが求められるようになり、その傾向は今後ますます強まっていくでしょう。
まとめ
2000年代に入って急速に進歩したインターネットと、それに対応して変化してきたIT人材に求められるスキルについてご紹介しました。
この20年はまさにIoT、AI、ビッグデータの活用を中心とした「第4次産業革命」とも呼ばれる激動の時代です。
ますます加速するこのテクノロジーの過渡期において、ITを扱うエンジニアであり続けるためには、より広範囲かつより深いスキルと知見が求められます。