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「他の企業は、どうやってオープンイノベーションを成功させているんだろう?」
「具体的な企業の成功事例を参考にして、自社でも取り組みを進めたい!」
企業の成長戦略として「オープンイノベーション」が注目される今、そうお考えの経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか?
新しいアイデアや技術を外部から取り入れ、自社のリソースと組み合わせることで、これまでにない価値を生み出すオープンイノベーション。その重要性や可能性は理解しやすい反面、いざ実行しようと思っても具体的な進め方がわからないという声もよく聞かれます。オープンイノベーションを成功させるためには、まずはそのためのポイントを押さえておくことが重要です。
そこでこの記事では、注目すべきオープンイノベーションの企業事例を通じて、成功のカギを探ります。具体的には、NTT西日本が運営する共創施設「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」をご紹介します。
QUINTBRIDGEは、まさにオープンイノベーションを促すための施設です。この施設では、設立からわずか3年で、多種多様な企業や組織を巻き込み、年間約90件もの共創プロジェクトを生み出すという驚くべき成果を上げています。なぜ、これほどまでに多くの人々が集い、次々と新しい価値が生まれているのでしょうか?
この記事では、「オープンイノベーションの企業事例」を探している方のために、QUINTBRIDGEの具体的な実績や、その成功を支える「運営」と「空間デザイン」の両面に着目して、成功の秘訣を紐解いていきます。
企業の規模に関わらず、あなたの会社でもきっと応用できるヒントが見つかるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 注目すべき企業事例!NTT西日本「QUINTBRIDGE」とは?
- 【成功要因1】多くの企業が参加したくなる「運営」の仕組み
- 2つの理念「Self-as-We」と「Giver精神」が生む共創文化
- 多様な企業を惹きつける「参加のしやすさ」
- NTT西日本が「主役」にならない中立性
- 【成功要因2】偶発的な出会いを促す「空間デザイン」の工夫
- 壁をなくし、交流を生むオープンな空間設計
- 企業の共創ステージを進化させるフロア構成
- 自社で活かすためのヒント
- 「理念・目的」の共有から始める
- 小さな「交流の場」を設ける
- 「Giver精神」を育む文化を意識する
- 外部パートナーとの連携も視野に入れる
- まとめ:企業の成功事例に学び、オープンイノベーションの第一歩を
注目すべき企業事例!NTT西日本「QUINTBRIDGE」とは?

まずは、今回の企業事例であるNTT西日本の「QUINTBRIDGE」がどのような施設で、どんな実績を上げているのかを見ていきましょう。
QUINTBRIDGEは、大阪市の京橋エリア、NTT西日本の本社敷地内にあるオープンイノベーション施設です。2022年3月に企業、スタートアップ、自治体、大学など、様々な背景を持つ人々が自由に集い、交流し、共に新しい価値を創造することを目指して開設されました。
その成果は目覚ましく、2025年1月時点で、なんと約2万5000人もの個人会員が所属。さらに、共創パートナーとして参画する企業や自治体などの組織は1882組にも上っています。
そして最も驚くべきは、この施設を起点として生まれた共創プロジェクトが、3年にも満たない期間で約90件に達していることです。これは、他のオープンイノベーション施設と比較しても非常に多い数字です。つまり、実際に様々なイノベーションが生まれる空間として機能していると言えるでしょう。
こうした活動と成果が評価され、QUINTBRIDGEは「2024年度グッドデザイン賞」を受賞しました。審査評価では、「利用ルールや多彩なプログラムによって、参加者が集まりやすい環境を整え、経済循環を超えて社会関係資本の蓄積を目指している点にも注目が集まった。この取り組みは、多くのイノベーション施設におけるエコシステム醸成のヒントや雛形になるだろう。(引用:GOOD DESIGN AWARD/受賞ギャラリー2024グッドデザイン賞)」と述べられており、まさに企業のオープンイノベーション事例として、多くの注目を集めていることがわかります。
では、なぜQUINTBRIDGEはこれほどの成功を収めることができたのでしょうか?その秘訣を「運営」と「空間デザイン」という二つの側面から探ります。
【成功要因1】多くの企業が参加したくなる「運営」の仕組み

QUINTBRIDGEの成功を語る上で欠かせないのが、そのユニークな「運営」の仕組みです。QUINTBRIDGEは単に場所を提供するだけでなく、人々が集い、自然と共創が生まれるような「土壌」を丁寧に育んでいます。
明確な理念に基づき、参加者の主体性と貢献意欲を尊重し、誰もが参加しやすい仕組みを整えることで、QUINTBRIDGEは活発な共創を生み出す強力な「磁場」となっているのです。
2つの理念「Self-as-We」と「Giver精神」が生む共創文化
QUINTBRIDGEが最も大切にしている理念の一つが「Self-as-We」です。これは、取り組みの主語を「わたし(I)」から「わたしたち(We)」に転換し、「“わたし”の成功のために、“あなた”に協力してもらう」のではなく、「社会課題を解決するために、“わたしたち”でチャレンジする」という考え方です。
この理念は、NTT西日本が情報や成果を独占せず、参加者全員で価値を創り上げていく姿勢を明確に打ち出したものだと言えるでしょう。
さらに、会員には「Giver精神」、つまり自らの知識や経験、人脈などを惜しみなく提供し、貢献しようとする姿勢を推奨しています。見返りを求める「Taker」ではなく、まず与える「Giver」が集まることで、信頼に基づいた協力関係が築かれ、活発な共創活動へと繋がっているのです。
多様な企業を惹きつける「参加のしやすさ」
優れた理念があっても、参加へのハードルが高ければ人は集まりません。QUINTBRIDGEは、より多くの多様な人々が参加しやすいように、年会費や入会費を無料に設定しています。その代わり、「何らかの課題を持っている人」「人脈や情報を持っている人」を入会条件とし、「会員自身が持つ人脈・情報こそが価値である」という発想の転換を行いました。
また、年間400回以上、平均するとほぼ毎日何かしらのイベントが開催されており、会員同士の交流や新たな学びの機会が豊富に提供されています。これにより、施設には常に多くの人が訪れ(その数なんと、平均で1日300人以上!)、新たな出会いやアイデアが生まれる活気ある場が維持されているのです。
NTT西日本が「主役」にならない中立性
大企業が運営する施設というと、その企業の色が強く出てしまうケースもありますが、QUINTBRIDGEはあくまで中立的なプラットフォームとしての役割を重視しています。
QUINTBRIDGEでは、NTT西日本が一方的にプログラムを提供するのではなく、会員自身が主体となってイベントを企画・開催することも奨励されています。この開かれた姿勢が、多様な企業や組織にとって参加しやすい雰囲気を作り出しているのでしょう。
【成功要因2】偶発的な出会いを促す「空間デザイン」の工夫

QUINTBRIDGEの成功を支えるもう一つの柱が、共創を誘発するために計算され尽くした「空間デザイン」です。
物理的な空間が、人々の行動や心理に与える影響は少なくありません。QUINTBRIDGEは、空間デザインの力を巧みに利用し、オープンイノベーションが自然発生しやすい環境を創り出しています。
壁をなくし、交流を生むオープンな空間設計
施設内は、特定の企業やグループがスペースを占有するのではなく、可能な限り壁を取り払い、オープンでフレキシブルな空間が広がっています。これにより、施設内のどこにいても他の会員の活動が自然と視界に入り、予期せぬ出会いや会話が生まれやすい空間を作り出しました。
例えば、1階のイベントスペースを囲むように設けられた段差のあるスペース。ここでパソコン作業をしていると、開催されているイベントの音声が自然と耳に入ってきます。もし興味を持てば、その場にいながらにして作業を中断してイベントに気軽に参加できる、といった具合です。
こうした「偶然の出会い(セレンディピティ)」を誘発する仕掛けが、随所に施されています。
企業の共創ステージを進化させるフロア構成
QUINTBRIDGEは3階建ての構造ですが、各フロアに明確なコンセプトと機能を持たせ、空間デザインも変えています。
- 1階/新たな出会いフロア:広々とした空間で、多様な人々が出会い、共創のきっかけを見つける場所
- 2階/アイデア実現フロア:ミーティングスペースを充実させ、生まれたアイデアを具体化していく場所
- 3階/事業拡大フロア:スタートアップやベンチャーキャピタルなどが入居し、事業化を加速させる場所
このように、階を上がるごとに共創のステージが進んでいく設計になっており、利用者は自身のフェーズに合わせて最適な環境を活用できます。また、フロアごとにコンセプトカラーを変えるなど、空間デザインによって利用者のマインドセットにも働きかけています。
自社で活かすためのヒント

NTT西日本のQUINTBRIDGEの事例は、主に大企業がオープンイノベーションを生み出す空間を創造するという大規模な取り組みです。そのため、一企業が目指すオープンイノベーションの取り組みとは単純に比較することはできません。
一方で、イノベーションを生み出すために作られた施設が成功した要因には、企業の規模に関わらず、多くの企業がオープンイノベーションを推進する上で学べるヒントが詰まっています。
「理念・目的」の共有から始める
QUINTBRIDGEの根幹にあるのは「Self-as-We」という明確な理念です。この理念では、次のような目的を明確にしています。
- 何のためにオープンイノベーションに取り組むのか
- どのような価値を共創したいのか
こうした目的を理解したうえで、理念に共感した人や企業が集うからこそ、誰かが一人勝ちするような競争ではなく、「わたしたち」で作り上げる共創が生まれているのです。
企業がオープンイノベーションに取り組む場合には、社内はもちろん、連携する可能性のある社外パートナーともこの理念を共有することが、成功への第一歩と言えるでしょう。
小さな「交流の場」を設ける
いきなり大規模な施設を作るのは難しくても、社内の一部スペースを開放したり、部署間の垣根を越えた交流会を定期的に開催したりするなど、まずは小さく始められる「場づくり」から検討してみてはいかがでしょうか。
大切なのは、役職や部署に関係なく、誰もが気軽にアイデアを交換できる雰囲気を作ることです。
「Giver精神」を育む文化を意識する
見返りを期待せず、まず貢献する姿勢(Giver精神)は、信頼関係の構築と共創の促進に不可欠です。
社内評価制度などで、個人や部署の短期的な成果だけでなく、他者への貢献や連携を評価する仕組みを取り入れることも有効かもしれません。
外部パートナーとの連携も視野に入れる
自社だけで全てを完結しようとせず、外部の知識や技術、ネットワークを積極的に活用することも重要です。
地域の商工会議所や業界団体、大学、そしてコンサルタントやアドバイザーのようなビジネスを支援する企業など、様々な連携先が考えられます。
まとめ:企業の成功事例に学び、オープンイノベーションの第一歩を
今回は、オープンイノベーションの先進的な企業事例として、NTT西日本の「QUINTBRIDGE」をご紹介しました。その成功は、単なる偶然ではなく、
- 明確な理念(Self-as-We)と参加者の貢献意欲(Giver精神)を尊重する運営
- 偶発的な出会いと交流を促す計算された空間デザイン
という、二つの大きな要因によって支えられていることが分かりました。
変化の激しい現代において、企業が持続的に成長していくためには、社内外の知恵を結集し、新たな価値を創造していくオープンイノベーションの視点がますます重要になっています。
NTT西日本の企業事例は、そのための具体的なヒントを数多く示してくれました。
「NTT西日本のようなオープンイノベーション事例を参考に、自社でも取り組みを進めたいけれど、何から手をつければ良いか分からない」
「共創パートナーとなる企業を見つけ、連携を具体化するためのサポートが欲しい」
「新しいアイデアを形にするためのシステム開発や、それを広めるためのWEBサイトが必要だ」
株式会社MUは、まさにそのような課題をお持ちの企業様の新しいアイデアを形にするためのシステム開発、共創プロジェクトを成功に導くためのWEBサイト制作やマーケティング戦略、そしてDX推進のパートナーとして、多くの企業のオープンイノベーション活動をサポートいたします。
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