アジャイル開発のメリットとビジネスの成果を最大化するポイント

アジャイル開発のメリットとビジネスの成果を最大化するポイント

目次

  1. アジャイルのメリット
  2. アジャイルのデメリット
  3. アジャイルの成果を最大化するためのポイント
  4. スプリント計画段階でのビジネス目標の設定
  5. すぐれたスクラムマスターの存在
  6. コミュニケーションの促進
  7. テストの自動化
  8. ユーザーのフィードバックを取り入れる
  9. まとめ

「アジャイル」とは、システム開発で用いられる開発手法の1つであり、ユーザーのニーズに合わせて柔軟に変化できるように、短い期間で小さな成果物を繰り返し作り出していく開発手法です。

アジャイル開発は、長期間かけて大きな成果物を作り出すウォーターフォール型の開発手法に比べて、様々な変化に迅速に対応することができる点が強みです。市場環境が急速に変化する現代社会で生き残るためには、素早い対応が必要となることから、現代ビジネスに適した開発手法だと考えられているのです。

しかし、以前当サイトでも取り上げたように、アジャイルは一般的に認識されている「小さく始めることができ、開発スピードと費用面で有利」とばかりは、必ずしも言い切れません。

アジャイルをシステム開発に応用するには、そのメリットやデメリットを理解した上で、ビジネスの成果を最大化することを目指さなければ意味がないのです。

そこでこの記事では、アジャイルのメリットとともに、改めて成果を最大化するためのポイントを解説します。

貴社のビジネスにアジャイルな手法を応用しようと考えておられる企業様は、どうぞご参考としてください。

アジャイルのメリット

アジャイルのメリット

アジャイルがもたらすビジネス上のメリットは多岐にわたりますが、その中でも最も重要なメリットは、要件の変更に対応しやすいことであるのは間違いありません。

従来のウォーターフォール型の開発手法では、要件が固定されてからの変更は非常に困難であり、変更にかかるコストが非常に高いとされていました。

しかし、アジャイルでは、小さなサイクルで開発を行うため、要件の変更に対応しやすくなります。

また、顧客とのコミュニケーションが密接になるため、顧客が求める機能や要件を正確に把握することができ、開発中に必要な要件変更を早期に発見することができます。

さらに、アジャイル開発では、開発チームが自己組織化(問題と制約が与えられたとき、どのようにその問題を解決すべきかをチームが自ら決めること)することで、開発プロセスを効率化することができます。

これにより、開発チームはプロジェクトの進捗に自分たちが責任を持ち、自分たちのスキルやスケジュールに応じて作業を進めることができるようになります。

開発プロセスの進捗管理も容易になり、生産性が向上するため、結果的に開発期間やコストを削減することができると考えられているのです。

アジャイルのデメリット

アジャイルのデメリット

反面、前述したようにアジャイルはメリットばかりがあるわけではありません。

例えば、アジャイルでは、顧客や利害関係者のフィードバックを積極的に取り入れながら開発を進めますが、これによって開発プロセスが常に変化するため、要件変更の管理が難しくなる場合があります。

要件変更はスケジュールや予算に影響を与える可能性があります。こうしたプロジェクトの管理が難しくなることは、アジャイルの持つ大きな落とし穴の1つです。

また、アジャイルではスピードやフレキシビリティを重視するため、従来のような仕様書や設計書を文章で詳細に作成することが少なくなります。

そのため、チームメンバー全員がアジャイルな開発手法に慣れていない場合は、開発の進行状況や要件の詳細を把握することが難しくなる場合があります。

開発チームが比較的小さく、開発者同士のコミュニケーションが密になるアジャイルな開発手法では、チームメンバーの継続的なトレーニングやスキルアップを行わなければ、プロジェクト自体が立ち行かなくなってしまう可能性すらはらんでいるのです。

小規模なチームであるため、メンバーが1人かけるとたちまちプロジェクトが暗礁に乗り上げてしまうというようなリスクも高まります。

アジャイルの成果を最大化するためのポイント

アジャイルの成果を最大化するためのポイント

このようなアジャイルのメリット・デメリットを踏まえた上で、アジャイルによりビジネスの成果を最大化するためには、次のポイントに留意する必要があります。

スプリント計画段階でのビジネス目標の設定

スプリントとは、一定期間(通常は1~4週間程度)で機能を開発するための期間のことです。

スプリントの計画段階では、その期間中に開発する機能やタスクの洗い出しや優先順位の設定が行われ、さらにビジネス目標の設定もこの段階で行わなければなりません。

この場合のビジネス目標とは、企業のビジョンや目的を実現するための具体的な目標を指します。

スプリントの計画段階でプロダクトのリーダー(もしくは経営陣)がビジネス目標を設定・提示することで、メンバー全員がその目標に向かって開発を進めることができるのです。

また、この段階で目標を設定することで、それに合わせた優先順位の設定や、必要な機能やタスクの洗い出しができるため、開発の効率性も向上します。

設定されたビジネス目標に沿って、リーダーは顧客のニーズを分析し、プロダクトバックログ(ロードマップと要件に基づいて開発チームが行う作業に優先順位を設定したリスト)に反映させます。

そして、チームはそのビジネス目標に向けて開発を進めるためのスプリントゴールを設定し、開発を行うのです。

このように、ビジネス目標を共有し、メンバー全員がその目標に向かって取り組み開発効率を高めることが、ビジネスの成果を最大化することに繋がっていきます。

すぐれたスクラムマスターの存在

スクラムマスターとは、アジャイル開発においてチームがフレームワークに従って開発を進めるために必要な環境を整える役割を担う人物です。

具体的には、プロジェクトの進捗状況を把握し、目標達成に向けた最適な環境を整える役割を担っています。

進捗状況や課題を可視化することで、ステークホルダーやチームメンバーがプロジェクトの進捗を正確に把握できるようになり、スムーズに作業を進めることができるようになります。

適宜スプリントの内容やスケジュールを調整することも、スクラムマスターの重要な役割の1つです。

そのため、アジャイルな開発手法でビジネスの効果を最大化するためには、アジャイル開発の原則やスクラムフレームワークに深く精通し、チームの進捗管理や問題解決に貢献できるコミュニケーション能力とリーダーシップを持ったスクラムマスターの存在が必須なのです。

コミュニケーションの促進

アジャイルな開発を行うには、チームメンバー間のコミュニケーションが欠かせません。

チームメンバーは定期的に会議やスタンドアップミーティング(立ったまま行われる10分程度の作業進捗や予定などの情報を共有するミーティング、朝礼など)を行い、進捗状況や課題の共有、相互の理解を深めることが求められるのです。

スタンドアップミーティングでは、各メンバーが一定時間内に自分の進捗状況や今後の予定を共有し、全体の進捗状況を把握しなければなりませんし、チームメンバー同士がお互いの進捗状況や課題について共有することで、お互いに助け合うことができます。

同時に、ステークホルダーとのコミュニケーションも重要なポイントです。

定期的なデモンストレーションやレビューを通じて、ステークホルダーからフィードバックを得る。フィードバックをチームメンバーが適切に取り入れることで、製品の品質を向上させる。

こうしたステークホルダーとのコミュニケーションによって、開発者はニーズに合った製品を開発することができるようになるのです。

コミュニケーションを促進するには、プロジェクト管理ツールやコミュニケーションツールを有効活用することも重要です。

プロジェクト管理ツールを使用することで、誰が何を行っているか、どのような課題があるかを把握することができますし、コミュニケーションツールを活用することで、チームメンバー間のコミュニケーションを円滑に行うことができます。

これらのツールをうまく活用することで、チームメンバー間のコミュニケーションを促進することが、プロジェクトの「品質」を向上させることに繋がるのです。

テストの自動化

短いスプリントでの開発が行われるアジャイルでは、品質の担保が重要な課題です。

このため、品質を確保するための方法として、テストの自動化が有効な手段の1つとしてあげられます。

テストの自動化とは、手動で行うテスト作業をプログラムによって自動的に実行することを指しており、これにより網羅的なテストを迅速に実行することができます。

ただし、テストの自動化のプログラムを構築するには時間と労力が必要です。

テストケースを自動化するためには、まず手動でテストケースを作成したうえで、自動化のためのテストスクリプトを作成するプロセスを踏まなければなりません。

当然、スクリプトの作成には高度なプログラミングスキルと試行錯誤が必要となります。そのため一見遠回りに見えますが、一度作成すれば、その後のテスト実行で何度でも使用することができるため、中長期的にはこの作業コストは回収できます。

このような時間と労力をかけてテストの自動化が行えれば、システムの品質を確保するだけでなく、開発チームの生産性向上にも繋がります。

テスト自動化を導入すれば、開発者は手動テストのための時間を節約することができ、開発速度が向上することは間違いありませんし、自動テストの実行結果を可視化することで、品質問題を早期に発見し、修正することもできます。

とはいえ、テストケースの自動化の際にテストケースを十分に検討ができておらず、網羅的にテストが行えていないと、品質に影響を及ぼすことも考えられますので、充分な注意が必要です。

ユーザーのフィードバックを取り入れる

ユーザーのフィードバックを取り入れることは、製品やサービスをより良くするための重要なステップです。

アジャイル開発では、製品やサービスの開発の早い段階から、ユーザーの意見や要望を反映することが重要視されています。

そのために、以下のような行動の結果を反映させることが必要です。

  • ユーザーテスト:製品やサービスを実際に使ってもらい、ユーザーの感想や要望を収集し、その結果を開発にフィードバックし、製品やサービスの改善に活用します
  • ユーザーストーリー:ユーザーストーリーとは、その製品やサービスがユーザーにとってどのような価値をもたらすかを示す、要件定義のために使われる概念です。開発チームは、ユーザーストーリーをもとに製品やサービスの機能や仕様を決定し、ユーザーの要望を反映させるため、開発の進捗状況を確認するための指標としても活用されます
  • コミュニケーション:ユーザーのフィードバックを反映するためには、開発チームとユーザーのコミュニケーションが欠かせません。定期的にユーザーとのコミュニケーションを取り、製品やサービスの開発の進捗状況や問題点を共有することで、製品やサービスの改善に繋げます

以上のように、ユーザーのフィードバックを取り入れることは、アジャイル開発において非常に重要なポイントです。

開発のためのスプリントごと、スモールステップごとにユーザーの声に耳を傾け、製品やサービスを改善することができなければ、ビジネスの成果を最大化することは不可能なのです。

まとめ

ビジネスの効果を最大化するための、アジャイルのメリットとデメリット、そして導入するポイントについて解説しました。

アジャイルとは、プロジェクトを細分化し小さく始められるため、開発スピードが早く結果的に費用も押さえられるとされている開発手法ですが、それは全てアジャイルのメリットとデメリットを踏まえた上で、適切に導入した場合の話です。

これを理解しないまま、ただ単に一般的な理解だけで進めてしまっては、かえって手戻りが多く、時間も費用も膨らんでしまうということすらありえます。

外部ベンダーとの協業を行う場合でも、このことを理解しておくことは重要なポイントです。

ぜひ本記事をご参考とした上で、貴社ビジネスへ最大の効果を発揮する形でアジャイルを取り入れてください。

筆者プロフィール

MU編集部

MU編集部

株式会社MU / 編集部
「お客様と共に前進するデジタルパートナー」をキーメッセージに掲げ日々、DX推進企業としてデジタルトランスフォーメーションを推進。
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