SaaSビジネスにはじまるプロダクトとクラウドソリューションの未来

SaaSビジネスにはじまるプロダクトとクラウドソリューションの未来

目次

  1. SaaSビジネスの特徴
  2. 顧客ニーズに合っている
  3. 顧客との長期間・継続的な契約がベース
  4. 新規顧客を獲得しやすい
  5. SaaSプロダクトの営業戦略
  6. フリーミアムとアップセル
  7. 顧客ニーズに合わせた瞬発力
  8. 半永久的なブラッシュアップ
  9. リードナーチャリング
  10. データ分析力
  11. クラウドソリューションの未来
  12. まとめ

SaaSビジネスはここ数年その市場規模を大幅に拡大し、今後も発展が期待されている分野です。

そんな背景もあり、スタートアップだけでなく、SaaSビジネスでプロダクトを作り出そうと考える企業は多いようです。

そこでこの記事では、SaaSビジネスの特徴を改めて確認し、SaaSによるプロダクトの営業戦略を考えます。

加えて、SaaSをはじめとしたクラウドソリューションの未来についても解説しますので、どうぞご参考としてください。

SaaSビジネスの特徴

SaaSビジネスの特徴

SaaSとは「Software as a Service」の頭文字を取ったもので、「クラウド上で必要な機能が利用できるようにしたソフトウェアの提供形態」を指しています。

従来は買い切り型のオンプレミスソフトウェアが市場の多くを占めていましたが、現在はクラウド上で扱えるSaaSなど、サブスクリプション型でユーザーに提供するビジネスモデルが主流です。

それは、SaaSビジネスには下記のようないくつかの特徴があるからです。

顧客ニーズに合っている

以前こちらの記事でもご紹介したように、SaaSをはじめとするパブリッククラウドサービスの市場は、大幅な拡大を続けています。

これはまさに、顧客ニーズがSaaSなどの形態を求めているということに他なりません。

クラウドを用いてサブスクリプションモデルで提供されるSaaSは、自社で莫大なコストをかけて開発する必要がありません。

また、クラウドで利用できるSaaSは、コロナ禍以降急速に広まったリモートワークでの利用にも適しています。

特に小規模事業者にとっては、オンプレミス型ハードウェアの設備投資やソフトウェアの開発にコストをかけることなく、短期間かつ少ない予算で必要な機能だけを利用できるSaaSは魅力的です。

このように、SaaSは現代の顧客が求めるニーズに合致しているのです。

顧客との長期間・継続的な契約がベース

基本的にサブスクリプションで提供するSaaSは、長期間・継続的な契約がベースとなります。

開発するベンダー側としては、買い切り型ソフトウェアのように一時の大きな収益とはなりませんが、「顧客の数×料金×継続期間」が収益として得られるため、安定した収益が期待できます。

逆にいえば、SaaSビジネスの基本は顧客維持にあり、定期的なシステムメンテナンスやバージョンアップで顧客のニーズに応え続けなければなりません。

リリース後もサポート体制を充実させ、定期的かつ半永久的なブラッシュアップが求められるのです。

新規顧客を獲得しやすい

既存顧客との継続的契約がベースであるビジネスモデルとは、一見矛盾しているように見えますが、SaaSは新規顧客の獲得もしやすいという特徴があります。

多くの場合SaaSは、無料やフリーミアムが入り口となっていることが多く、新規顧客がサービスを利用しやすいビジネスモデルとなっています。

こうしたモデルでは、顧客側としては気軽にサービスに登録できることが大きなメリットとなっているため、そこからのアップセルを含めた導線をしっかりと設計することができれば、新規顧客の獲得に繋がるのです。

ただし、無料体験などで呼び込んだ利用者が継続的なサービスの利用者にならなければ意味がありません。

そのため、SaaSビジネスを円滑に運営するためには、登録者数、契約率、解約率など、多くの指標を獲得・分析することが求められるのです。

SaaSプロダクトの営業戦略

SaaSプロダクトの営業戦略

SaaSプロダクトをビジネスとして成立させるためには、抑えておくべきキーワードがいくつかあります。

本章ではSaaSプロダクトの営業戦略を考える上で大切なキーワードについて解説します。

フリーミアムとアップセル

前章でも紹介した通り、多くのSaaSビジネスモデルは、フリーミアムを利用したマーケティングが利用されます。

フリーミアムとは「フリー(無料)」と「プレミアム(割増料金)」を合わせた造語で、基本的なサービスや製品を無料で提供することで顧客を獲得し、その後より高度なサービスや機能を有料で提供して収益を得るビジネスモデルのことです。

つまり、入り口はフリー(無料)で広い間口でできるだけ多くの顧客を囲い込み、その先は顧客の単価を向上させる仕組み(アップセル)を組み合わせプレミアム(割増料金)へと繋げるフリーミアムのビジネスモデルが、SaaSプロダクトの営業戦略を考える上では、非常に有効な施策となります。

顧客ニーズに合わせた瞬発力

ダウンロード型ソフトウェアを中心とした従来のサービスの場合、万が一、リリース後に製品の不具合が発覚したとしても、修正プログラムをサポートすることは容易ではなく、修正にはベンダー側・顧客側双方ともに多くの手間がかかります。

そのため、製品をリリースする際には、不具合が発生する可能性を極限まで減らし、完璧に作り上げたパッケージを販売しなければなりませんでした。

しかし、SaaSの場合はある程度完成した時点でサービスをリリースし、不具合が発生した際や新機能を付与したい時などに、簡単にアップデートを行うことができます。

修正に伴う顧客側の負担はほとんどないというのは、SaaSの大きな利点です

この利点を生かして、リリース後であってもデータの分析や直接的なアンケートなどで顧客ニーズを探り、それに合わせて瞬発力のあるアップデートを行い続けることができるのです。

半永久的なブラッシュアップ

サブスクリプション型モデルが基本のSaaSにおいては、一定以上の顧客が継続してサービスを利用してくれることがビジネスの前提にあります。

顧客を増やし、また顧客離れが起こらないサービスであるためには、半永久的なブラッシュアップが求められます

リリース時においてどれだけ優れたSaaSだとしても、初期のニーズを満たすだけで十分とは言えず、顧客満足度を上書きし続けるサービスである必要があるのです。

そのためには、当然ながらソーシャル・サポートなどで顧客からのフィードバックを集める仕組みづくりも重要となります。

リードナーチャリング

無料もしくはフリーミアムな入り口戦略を取るSaaSでは、最初の利用に対する顧客のハードルは低く抑えられます。

そうして獲得した見込み客をリードナーチャリング(見込み客の育成)することで、アップセルへと繋げ、さらにはロイヤルカスタマーの創出を狙っていく必要があります。

このためには具体的な戦略が必要なのは言うまでもありませんが、必ずしも複雑な施策を展開する必要はありません。

提供するサービス内容によっては、「まずはSaaSプロダクトを使ってもらう」ということがそのままリードナーチャリングとなり、使用感や機能を気に入ってもらえれば有料版の利用増に結びつくこともあります。

また、顧客が増える中で企業規模が大きな企業も増えていけば、さらに上位プランへの切り替えを選択する企業も増えてくるはずです。

データ分析力

サービスの提供に伴うデータをどれだけ分析できるかという事が、SaaSのビジネス戦略を考える上でもっとも重要な施策の1つです。

SaaSプロダクトの営業戦略上、チェックしておくべき指標は主に次のようなものです。

  • ARPU(Average Revenue Per User):1ユーザーあたりの平均的売上を示す指標
  • MRR(Monthly Recurring Revenne):月次経常収益。毎月繰り返し得られる収益・売上を合算したもの
  • CAC(Customer Acquisition Cost):顧客獲得コスト。顧客を獲得するために必要なコスト
  • LTV(Life Time Value):顧客生涯価値。1人、あるいは1社の顧客が契約から解約までの期間にもたらす利益の合計
  • チャーンレート(率):顧客の解約率、退会率。

クラウドソリューションの未来

クラウドソリューションの未来

現在、SaaSをはじめとしたクラウドサービスを活用したソリューションは、急速に広がりをみせています。

これまではクラウドなどとはあまり縁がなかった分野にも、その活用範囲が広がっているのです。

例えば農業分野では、広大な土地を少人数で管理するために遠隔操作の農業用ドローンや自動運転農機を使用したり、農作物や家畜の様子をモニタリングしたりと、新たなクラウド活用が試みられています。

また、都市開発の分野でもAIカメラで人の動きや状態を効率的かつ効果的に管理する、スマートビルやスマートシティなどの取り組みが始まっています。

こうした取り組みは民間はもとより、政府主導の元でも行われています。

例えば内閣府のSociety 5.0構想では、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の未来社会の実現を目指していますが、この構想の実現はIoT(Internet of Things/モノのインターネット)ですべての人とモノが繋がることに根ざしているのです。

これらの例は、今後ありとあらゆる分野にクラウドソリューションが拡大する可能性を示す証左と考えられます。

さらにそれだけでなく、ご存知のようにあらゆるプロダクトはクラウドを利用することで、距離の制約を飛び越えます。

言語の壁は残っているとはいえ、プロダクトそのものは今後一層グローバルに、いや、サイバー空間での広がりまでも考えるのであれば、物理的な「世界」を超えた、無限の世界がクラウドソリューションの未来には広がっているのです。

まとめ

現在、市場規模が拡大し続けているSaaSビジネスについて、改めてその特徴を確認するとともに、プロダクトの営業戦略、さらにはクラウドソリューションの未来について解説しました。

既存の企業もスタートアップ企業も、今やインターネットやPCを利用した新しいサービスを開発する際には、SaaSをはじめとするクラウドソリューションの活用は必要不可欠です。

小さく始めて大きく発展させられるのがSaaSビジネスの特徴ですが、その一方で、立ち上げや運営にあたって検討すべきことは山のようにあります。

事業を開始する前には、その特徴や重要なキーワードを改めて整理し、データの収集・分析などサービスの維持・向上のために必要な仕組みづくりも合わせて行う必要があります。

最後に、SaaSプロダクトを用いてビジネス展開を行う場合には、明確な出口戦略を持っているかどうかも重要です。

企業価値を高めてM&Aで売却したり、株式上場で独立を維持したり、すべては貴社の戦略次第ではありますが、入り口から出口までを1つのストーリーとして明確に描けることも、SaaSビジネスにおいて忘れてはいけない視点です。

そうした事も念頭に置いた上で、ぜひとも貴社のSaaSプロダクト戦略を確立させてください。

筆者プロフィール

MU編集部

MU編集部

株式会社MU / 編集部
「お客様と共に前進するデジタルパートナー」をキーメッセージに掲げ日々、DX推進企業としてデジタルトランスフォーメーションを推進。
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