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現代ビジネスの必修科目「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進方法について、初歩から解説していく連載企画【初心者のDX入門】。これまで「DXとは何か」(第1回)から始まり、プロジェクトチームの立ち上げ(第2回)、プランニング(第3回)と、DX推進に必要な知識を学んできました。
プランニングが完成したら、いよいよDXに向けて動き出すわけですが、具体的にどのような取り組みから始めれば良いのでしょうか?
DXは、企業の理念やビジネスモデルそのものを変革し、組織全体を進化させる壮大な取り組みです。その第一歩となるのが、デジタイゼーション(デジタル化)です。
デジタイゼーションとは、紙の書類や手作業で行っていた業務をデジタル化することで、業務効率化や新たな価値創造を促進するプロセスです。多くの企業にとって、DXを推進する上で基礎固めとなる重要なステップと言えます。
今回は、デジタイゼーションの重要性と、具体的な実践方法について解説していきます。
目次
デジタイゼーションで実現すること

デジタイゼーションによって、業務効率化、新価値創造、顧客体験向上など、様々な効果が期待できます。具体的には、以下のようなことが実現可能です。
文書管理のシンプル化
紙の書類をデジタル化することで、保管スペースや管理の手間を削減することができます。
これにより生まれるメリットは次のようなものです。
- 必要な書類をすぐに検索できるようになる
- 書類の紛失や破損のリスクを軽減できる
- ペーパーレス化によるコスト削減に加えて、環境負荷軽減にも貢献できる
情報アクセス性の向上
デジタル化された情報は、時間や場所を選ばずにアクセス可能です。
情報のアクセス性が高まることの具体的なメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 従業員が外出先からでも、必要な資料やデータにアクセスして業務を遂行できるようになる
- 顧客が、いつでもどこでもWebサイトから商品情報やサービス内容を確認できるようになる
- 経営者が、リアルタイムで業績データを確認し、迅速な意思決定を行えるようになる
データ共有の容易化
インターネットや社内ネットワークを通じて、データを簡単に共有できるようになります。
これにより、次のようなメリットが生じることが期待されます。
- 部門間での情報共有がスムーズになり、連携が強化される
- 顧客と情報を共有することで、より密接なコミュニケーションを図れる
- 社外のパートナー企業と連携し、新たなビジネスチャンスを創出できる
業務プロセスの自動化と効率化
デジタル化によって、これまで手作業で行っていた業務を自動化し、効率化することができます。
具体例として、次のようなものが挙げられます。
- RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、定型業務を自動化する
- AI-OCRを活用し、書類のデータ入力を自動化する
- ワークフローシステムを導入し、承認プロセスを効率化する
データ分析の効率化
デジタル化されたデータは、ExcelやBIツールなどの分析ツールを用いることで、効率的に分析することができます。これにより、次のようなことが行えるようになります。
- 顧客の購買履歴を分析し、ニーズに合った商品を提案する
- 売上データを分析し、今後の販売戦略に活かす
- Webサイトのアクセスログを分析し、サイト改善に繋げる
データドリブンな意思決定
デジタルデータを活用することで、データに基づいた客観的な意思決定を行うことができるようになります。これにより、経営面において次のようなメリットが期待できます。
- 感情や経験に左右されない、論理的な意思決定が可能になる
- より精度の高い予測や判断を行い、リスクを軽減できる
- 変化の激しい市場環境に、柔軟に対応できる
顧客体験の向上
顧客データの分析に基づいた、パーソナライズされたサービス提供が可能になります。
これにより、次のようなメリットが生まれます。
- 顧客1人ひとりのニーズに合った商品やサービスを提供できる
- 顧客満足度を高め、リピーターを増やす
- ブランドロイヤリティを高める
新たな価値創出への道筋
デジタル化は、新しいサービスやビジネスモデル創出の基盤となります。具体例として、次のようなものが挙げられます。
- 顧客データ分析に基づいた、パーソナライズされたサービスを提供
- オンラインサービスを展開し、新たな顧客層を獲得
- デジタル技術を活用した、新たなビジネスモデルの構築
デジタイゼーション実践の5ステップ

デジタイゼーションを成功させるためには、以下の5つのステップを丁寧に進めることが重要です。
1.デジタル化すべき対象の選定
まずは、自社の業務プロセス全体を分析し、デジタル化によって効率化や効果が見込める業務を特定します。
具体的には、以下のような業務が挙げられます。
- 紙の書類が多い業務:顧客情報、契約書、請求書、領収書などの管理が必要な業務
- 手作業が多い業務:データ入力、集計、転記などの事務処理が必要な業務
- ミスが発生しやすい業務:複雑な計算、繰り返し作業、情報共有の遅れが生じている業務
これらの業務をデジタル化することで、業務効率化、コスト削減、ヒューマンエラーの削減、情報共有の促進などの効果が期待できます。
ただし、全ての業務を一度にデジタル化することは難しい場合もあるため、優先順位をつけることも重要です。
優先順位をつける際には、
- 緊急度:早急に改善が必要な業務
- 重要度:企業の業績に大きく影響する業務
- 実現可能性:現状のリソースや技術でデジタル化が可能な業務
- 費用対効果:投資に見合う効果が期待できる業務
などを考慮します。
2.ツールとソフトウェアの選定
デジタル化の対象となる業務が決まったら、次は適切なツールやソフトウェアを選定します。
ツールやソフトウェアを選定する際には、次のような点を考慮します。
- 業務内容との適合性:デジタル化したい業務に適した機能を備えているか
- 使いやすさ:従業員が容易に使いこなせるか
- コスト:導入費用や運用費用が予算内に収まっているか
- セキュリティ:データを安全に管理できるか
- サポート体制:導入後のサポート体制が充実しているか
- 拡張性:将来的な業務拡大に対応できるか
- 他システムとの連携:既存システムと連携できるか
また、多くのソフトウェアベンダーが無料トライアルを提供しているので、実際に試用してから導入を検討することをおすすめします。
3.データのデジタル化の方法
紙の書類をデジタル化する際は、スキャナーで取り込み、OCR(光学文字認識)技術でテキストデータ化する方法が効率的です。
OCRとは、画像データから文字情報を抽出する技術です。OCRを活用することで、紙の書類をテキストデータに変換し、検索や編集、分析などが可能になります。
また、手書き文字に対応したOCRソフトも登場しており、様々な種類の書類をデジタル化することができます。
データ入力の手間を省き、業務効率化に繋がるだけでなく、データの正確性を向上させる効果も期待できます。
4.データ管理とセキュリティの確保
データのデジタル化には多くのメリットがありますが、適切に管理しなければ、紛失、破損、漏洩などのリスクがあります。そのため、データの保管場所、アクセス権限、セキュリティ対策などを明確化し、適切なデータ管理体制を構築することが重要です。
具体的には、次のような施策を実施することで、データの安全性を確保することができます。
- データの保管場所:クラウドサービスを利用する場合は、信頼性の高いサービスを選ぶ
- アクセス権限:従業員ごとにアクセス権限を設定し、必要なデータにのみアクセスできるようにする
- セキュリティ対策:ファイアウォールやアンチウイルスソフトを導入し、サイバー攻撃からデータを保護する
- バックアップ:データのバックアップを定期的に取得し、災害や事故に備える
5.教育とトレーニング
デジタル化をスムーズに進めるためには、従業員がデジタルツールを使いこなせるように、研修やトレーニングを実施することが重要です。
研修では、一例として以下のような内容を教育します。
- デジタルツールの基本的な操作方法
- データ入力や編集の方法
- データの検索や共有の方法
- セキュリティ対策に関する知識
- トラブル発生時の対処法
また、トレーニング後も、定期的なフォローアップや質問対応などを行うことで、従業員が安心してデジタルツールを使えるようにサポートするようにします。
デジタイゼーションを成功させるためには、これらのステップを1つずつ着実に進めていくことが重要です。
まとめ|デジタイゼーションからDXへ
今回は、DX入門の第4回目として、DXの基礎固めとなるデジタイゼーションについて、具体的なステップを交えて解説しました。
デジタイゼーションは、業務効率化、コスト削減、新価値創造など、多くのメリットをもたらします。
しかし、デジタイゼーションはあくまでDXの第一歩に過ぎません。
真のDXを実現するためには、デジタル化されたデータを活用し、ビジネスモデルや組織文化を変革していく必要があります。
デジタイゼーションを通して得られたデータを分析し、顧客のニーズを把握することで、新たなサービスやビジネスモデルを創出し、顧客に新たな価値を提供していくことが重要です。
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