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シンボルマーク。ロゴマーク。
さまざまな表現をされることもある「ロゴ」ですが、どのような言葉を使っても、それが企業のアイデンティティを雄弁に物語るモノである必要があります。
今や、中小企業といえども自社の業務や会社のあり方を「ブランド化」し、ステークホルダー全体に的確に伝えることができなければ、激化する競争社会の中で生き残っていくことはできません。
そこで今回は、企業の顔ともいうべきロゴ制作の実態について解説します。
目次
中小企業もロゴでブランド化する時代
片側の欠けたリンゴを見れば「Apple社」、黄色く丸いアルファベットのMを見れば「マクドナルド社」。特徴的な意匠を見れば、誰もがその企業名や商品を思い出せるように、企業がユーザーに認知してもらうためには、見た目からのブランド戦略も欠かせません。
一流企業などはロゴを1つ制作するのに、億単位の費用をかけるケースもあります。
中小企業がそれだけの金額をかけてロゴを制作することは難しいでしょうが、それでも地域社会や顧客、投資家たち、さらには自社で働く従業員に「自社ブランド」をひと目で認識してもらうために、ロゴの果たす役割は重大です。
「ロゴマーク」は間違い
一般に「ロゴマーク」と呼ばれる事の多い「ロゴ」ですが、実は正式には「ロゴマーク」という言い方は間違いです。
「ロゴ(Logo)」や「ロゴタイプ(Logotype)」、あるいは「シンボルマーク(Symbol mark)」ということはあっても、「ロゴマーク」とは和製英語であり、正式な言葉ではありません。
シンボルマークとロゴタイプ
一般に「ロゴ」といわれているモノは、それぞれのパーツを細分化することができます。
- シンボルマーク:企業や団体、サービスや商品の持つイメージをマーク(象徴した図形)として表したもので、一般に「マーク」と省略していう場合はシンボルマークを指す
- ロゴタイプ:もとは印刷用語に由来を持ち、活字を2文字以上組み合わせたモノを「ロゴタイプ」と称しましたが、現在では社名やブランド名、あるいは商品名などを表す「デザイン文字」の総称
- ロゴ:もともとは「ロゴタイプ」を省略する言葉として使われ、デザインされた文字を表していたが、現在ではシンボルマークとロゴタイプを総称して「ロゴ」と表現することが多い
このようにロゴを構成するそれぞれのパーツには、それぞれの意味があり、当然それぞれの役割があります。
パーツの持つ役割をしっかりと理解してデザインすることが、ロゴ制作の第一歩です。
ロゴ制作で考えるべきCI
ロゴは、単に企業やブランドの名前やイメージを「見栄え良く」整えたモノではなく、企業のあり方や周囲に伝えたいメッセージ、製品やサービスの特徴、コンセプトなどの情報を視覚的に伝えられるようデザインしたものです。
いわば、「企業の存在意義を証明する」ための意匠がロゴなのです。
そこで必要となるのが、CI(Corporate Identity:コーポレートアイデンティティ)という考え方です。
企業理念を形にするCI
「CI(Corporate Identity:コーポレートアイデンティティ)」とは、「企業のあるべき姿を体系的に整理し、それに基づいて自社の文化や特性・独自性などをイメージ、デザイン、メッセージとして発信することで会社の存在価値を高めようとするビジネス手法(引用:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)」です。
「CI=ロゴやマーク(シンボルマーク)を作ること」と誤解されることもありますが、本来CIとはその言葉の通り、企業文化を高めステークホルダーたちとよりよい関係を築くことを目的とした、企業理念そのものを指しています。
そのCIを具体的な形にしたものがロゴであり、ロゴを制作するためにはまず自社のCIをしっかりと確立し、明文化しなければなりません。
CIをかみ砕くと、さらに3つの要素に分けて考えることができます。
CIを構成する3要素
CIを構成する3要素は、次の通りです。
- マインド・アイデンティティ:MI
- ビヘイビア・アイデンティティ:BI
- ヴィジュアル・アイデンティティ:VI
それぞれについて以下に詳しく解説します。
考え方を統一するMI
MIとはマインド・アイデンティティ(Mind Identity)。つまり、企業の考え方を表す言葉で、企業が目指すべき理想的な在り方や、社会的存在意義・役割などの企業理念そのものを現しています。
MIはCIを決める上でもっとも重要な要素です。これがしっかりと決まっていなければ、この後のBIもVIも決めることができません。
社是やスローガンなどと同様の意味で、主に経営者が社内外に対して発するメッセージを明文化したものです。
行動を統一するBI
BIとはビヘイビア・アイデンティティ(Behavior identity)といい、企業理念や経営哲学などを実現するための方策です。
理想として掲げたMIの実現に向けてどのように行動するのか。どのように具現化していくのかなど、行動の指針として使われます。
事業分野ごとに戦略や策定に基づき、それをいつまでに、どれだけの規模で実現するのかなど、経営目標を達成するための具体的な計画や行動そのものを指しています。
これを明確に言語化・可視化することで、社内には明確な目標とゴールの設定を、社外には企業の向かうべき道筋を具体的に示すことができます。
見え方を統一するVI
MIとBIで作り上げたコンセプトを明確にヴィジュアルとしてシンボライズすること。それがVI(ヴィジュアル・アイデンティティ:Visual Identity)で、ロゴ作成はまさにVIの領域です。
企業や製品・サービスを「ブランド」として社外に広く認知させ、同時に社内に理解浸透させ行動させるという2つの目的を、意匠化されたロゴで完結に伝えるのがVIの役割です。
ロゴを作成するためにはVIを明確にする必要があり、さらにVIを明確にするためにはMIやBIの考え方、つまりはCIという企業経営の「柱」が明確に明文化されている必要があります。
ロゴをデザインする際の流れ
CIを明確に決めることでVIが決まり、ロゴ作成の材料がそろいます。
それをもとに、以下のような流れでロゴをデザインしていきます。
企業イメージを言葉にする
まずは経営者の持つ理想の企業像、経営理念、行動指針を具体的にし、誰が見ても分かる「言葉」にまとめます。
これこそが「CIを明文化する」という工程で、社是やスローガンとしてすでにまとめている企業では、それをさらにかみ砕いたイメージまで落とし込みます。
外部からの見え方を考える
VIの工程として「外部から自社がどう見えているのか」「どう見せたいのか」を決めます。
ロゴで用いる色や形、ロゴタイプの種類・傾向など、様々な要素が複雑に絡み合うことでしょう。
企業が伝えたいメッセージと、ロゴから連想されるイメージの間に乖離(かいり)がないように、いくつものパターンを作成しアンケートを取るなど、慎重に行いたいポイントです。
必要であればプロのデザイナーの手を借りるなど、実際にもっとも費用がかかる工程です。
マニュアルを作成する
理想的なロゴが完成したら、次はその使われ方を規定するマニュアルを作成します。
色や形、サイズや余白に至るまで、事細かに利用規定を決定しておくことが企業のブランドイメージを守ることにもつながり、「意に反した使われ方をされ企業のイメージが下がってしまった」などの危険性を可能な限り排除します。
※本記事では、ガイドライン(使い方)、レギュレーション(禁止事項)、テキスト類を含めて「マニュアル」としています。
ロゴ制作の注意点
ロゴ制作にあたっては、マニュアルを厳格に規定しておくということ以外にも、様々な注意点が存在します。
この章では、そんなロゴ制作の注意点について解説していきます。
マニュアルは厳格に
ロゴはひとたび世間に出てしまえば、意図する以上に拡散していく可能性をはらんでいます。
その際、企業ブランドそのものやブランドの持つ世界観を侵害されないため、「どの範囲でなら使用してよいか」を明文化したガイドライン(使い方)やレギュレーション(禁止事項)を策定しておくとよいでしょう。
こちら側の意図と違う用いられ方でブランドイメージの損失につながらないよう、マニュアルは厳格に規定しておくべきです。
- 形:ロゴタイプの種類やシンボルマークの形など、独自に組み合わされて類似の別物とならないよう規定
- 色:色が変わればすべてのイメージが変わってしまうため、同じ赤でもどの赤なのかをしっかりと明記
- 余白:ロゴが他の図案や文字などとかぶって見えなくなるのを避けるためにも、余白も規定しておくことが重要
- サイズ:複雑なデザインのロゴなどはあまり縮小してしまうと判別が付きづらくなるため、使用に際しての最小サイズなども規定
- 禁止事項:変形や回転、字間、一部使用、あるいは製品へのロゴ入れを行う際使ってはいけない事例など様々なケースを想定した禁止事項を設定
自作する場合はAdobe Illustratorを使用してみる
ロゴは基本的にベクターファイルで書き出します。
また、ロゴはWEBサイトだけでなく印刷物や看板などあらゆる場面で使われるため、通常のペイントソフトに用いられる「点(ピクセル)」で表現されたデザインでなく、「ベジェ曲線(数式化した曲線データ)」で作成されている必要があります。
この両方を解決するために、ロゴを自作する場合にはAdobe社のIllustratorを使用することをおすすめします。
Illustratorであればベジェ曲線でデザインすることもでき、既成のフォントを利用する場合でもフォントの輪郭をアウトライン化してベジェ曲線に修正できます。
また、Illustratorで作成したaiファイル(aiデータ)デザインを元に、WEB表示用にSVG(Scalable Vector Graphics:スケーラブル・ベクター・グラフィックス)などのベクターファイルで書き出すことも容易です。
色使いは控えめに
色には固有のイメージがあり、その色の持つイメージがそのまま企業のブランドイメージと重ねっていることが理想です。
そのため、ロゴに使用する色はできる限りシンプルであるほうが人々のイメージを想起しやすいといった特徴を持っています。
例えばコカ・コーラ社であれば赤、マクドナルド社であれば黄色(と赤)というように、企業と色が1対1、あるいは1対2ぐらいで結ばれていると、より人々の心に残りやすいでしょう。
逆に使用する色数が多すぎると、ロゴ自体の印象が薄くなってしまいます。
オリンピックの五輪マークやグーグル社のロゴタイプのように色数を多く使用したロゴを制作するのは、配色ルールに則ったバランス感覚に長けたプロのデザインセンスが問われます。
自社でロゴを制作する場合は、できれば1~2色程度の利用にとどめ、あまりごちゃごちゃした印象とならないよう注意すべきです。
またPCでロゴを制作する場合には、印刷物などで利用されることも念頭に置き、カラーモードをPCなどの画面で利用されるRGBではなく、CMYKで設定するのも大きなポイントとなります。
著作権・商標権に注意
シンボルマークになにかのモチーフを使用する場合や、キャッチコピーなどをロゴに含めるような場合では、著作権や商標権に出願されたもので類似のロゴがないかといったことを調べる必要があります。
特に既成のフォントをアレンジしたデザインなどは、こちらの意図せぬうちに類似のロゴが生み出されてしまう場合も多く、十分に注意が必要です。
また、既成のフォントを利用する場合には、そのフォントが商用利用可能な「フォントライセンス」を有しているかどうかを調べ、必要があればフォントの作成者に許可を取らなければなりません。
著作権・商標権に関してはそれを真似て作ったロゴではないとしても、類似を指摘されればこちら側がロゴを変更したり、使用料を支払ったりしなければならないなど、余計なトラブルに巻き込まれる可能性すらあり得ます。
また、オリジナルのロゴが作成できてもそれ自体を商標登録しておかなければ、後から競合に登録されてしまった場合には、権利はそちらにあるということになってしまいますので、十分に注意が必要です。
まとめ
自社のロゴを作成しようと考えた場合の、ロゴ制作の考え方やその流れ、さらにはロゴ制作時の注意点について解説しました。
端的にまとめるとロゴは次の流れで作成されます。
- CIを明文化する
- 明文化したCIを効果的に表現できるロゴをデザインする
- 出来上がったロゴの使用マニュアルを厳密に定める
- ロゴの商標登録を行う
ロゴは企業の理念や行動指針を社内外に対して公に知らしめる重要なアイテムで、それこそ「企業の顔」です。
自社で作成する際の注意点に関しては記事中でも解説しましたが、ロゴの作成はマーケティング戦略の重要ポイントでもあります。
最適解のロゴ作成のためには、ぜひプロの手を借りることも検討してみてください。
株式会社MUでは、ブランドマーケティング支援の一環としてロゴデザインの制作やCI策定のお手伝いも行っています。